シュミット カール
シュミット カール
97.09.13
「パルチザンの理論」「政治的なものの概念」についての中間所見 ちくま学芸文庫
「政治的なものの概念」は1927年に発表されたが、32年に改訂版が出ている。この書は、その63年時点での「中間所見」なのである。
シュミットは19世紀までの政治理論の枠組みが崩れた現代政治を「友-敵」理論で定式化したが、その後現代政治はますます流動化を進めた。そこで改めて定式化することが本書の主題である。
近代ヨーロッパの国家間戦争は「正しい敵」との戦いであった。国家政治の延長としての戦争であった。それ故、戦争は特別のゲームとして相互認知され、その戦闘員も犯罪なぞから聖別されていた。
ところが、ナポレオンに抵抗したスペインのパルチザンたちは自分たちの土地を守るため、新たな戦いを生み出した。それは国家政治の延長としての戦争ではなく、犯罪にも紛いかねない戦争だった。ここまでが「政治的なものの概念」の範疇だ。
レーニン以降、絶対的な無差別的な戦争が始まる。「絶対的な敵」との戦いである。これはゲームではない。徹底的な殺し合いである。
ここでシュミット理論は終わる。もはや「正義」は客観的なものではありえないのである。
Copyright(c)1997.07.27,"MONOGUSA HOMPO" by Monogusa Taro,All rights reserved