ストー アンソニー
ストー アンソニー
97.12.20
「ユング」(河合隼雄訳)岩波書店
ユンギアンにとって、ユングを客観的に理解するにあたって、最適な本である。ユングとフロイトとの思想の違いの根がよくわかる。たとえば、フロイトが神経症患者の症例から自身の理論を起こしたのに対し、ユングは精神病患者のそれから起こした。また、家庭環境では前者が父性的であり、後者は母性的であったことも十分に示唆的だ。
さらに重要なことは、ユング理論はユング個人の資質がたいへん大きなファクターになっていることだ。対立物の宗教的な統合を求めたり、自分の中に別人格を認めたりする思想。また、患者の内面にひたすら進み、現実の対人関係への言及がないこと。孤独の好み、性の軽視、幻視の重視など、みなユング自身の傾向なのである。
あとは、断片的に。
フロイトは自我がまだ弱い青年期の危機を扱い、ユングは自我の一旦確立した中年期の危機を扱った。
フロイトの治療は「性器性」つまり成熟した異性関係の確立をめざした。ヒステリー症はエロス的な病いで、成人としての性的障害なのだ。
外向的タイプの発病では、対人関係に問題があり、最終的にヒステリー症、躁鬱病に至る。
内向的の発病では、強迫症状を示す。絶対主体感、無力感、意味喪失が特徴で、最終的に分裂病(ストー。河合は神経衰弱)に至る。
自己=心の中の「神」の元型
ユングの神は善悪両性を具有する。
「神は左右の手でもって世界を治めており、その右手とはキリストであり、その左手とはサタンである」(ローマのクレメンス)

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