1987


銀河銑道の夜について語るのは難しいので
銀河鉄道社の夜について語りたいと思う
(急いでお断わりしておくが銀河鉄道社について語るのは易しいということではない)
わたしが関心を持っているのは
むしろ夜についてである
思えば、銀河鉄道社こそ夜だった
夜とは何か?
それは外部があるいは背後が這い出してくる時間
そうでしょう、あなたもわたしも
夜になると自分ではない誰かになるでしょう
ところで誰かとは誰か?
(ジブンだったりして!)

 *  *  *  *  *

ところで先日
天神祭を初めて観た
船渡御もおもしろかったが
わたしは神輿の動きに一番の関心があった
神が乗っているからだ
神は人込みの間を摺り抜け
自身の宮に入ろうとする
(否、正しくは入れられようとしている)
しかし神は抵抗する
宮入りを拒むのだ
再び閉ざされ封じられてしまうから
そこで慰撫が行われる
荒霊を鎮めるため
一斉の囃しとともに精一杯の動揺が加えられる
漸く満足した神は宮入りを許した
  こんな光景を観たのだった

 *  *  *  *  *

最近はじっくりと出会えるものが少ない
例えば書物に
そういう中で「RHIZOME」を手に入れた
これはわたしが待ち望んでいたマニフェストだ
十年間待っていた
リゾームとは根茎
つまり竹の地下茎のような仕組みを云う
自分以外のものと繋がっていること
繋がっているものが自立した別物であること
その繋がりが連続していて切断不能であること
故に中心が不明で主体が不在であること
リゾームはだから現在だ
目分が誰かわからない現代だ

 *  *  *  *  *

私の領土 すなわち「わが領土」についても語らねばならないだろう
わが領土はフォトメールの写真のように小さい
そして静止している
救いはその写真の人物がいくらかでも微笑んでいることだろう
わが領土は例にもれず
地下にある
一体どれくらいの深さなのかはわからない
しかし明かりには苦労しないし
息苦しくもない
住み慣れたからに過ぎないのかもしれない
いずれにせよ
ここはわが領土
わたしの世界
ここでわたしは生を営む
白く明るい生を静かに燃やす
そう 以前一度黒い牛が訪ねてきた
道を尋ねてだったと思う
そのときも言葉が通じなかった
わたしは言ってやったのだ
「ここはMELKWEG」
そしたら奴はどうしたろう
いきなり坐りこんで尾を振っていやがる
それからだ 牛がわが領土に棲むことになったのは
わが領土に女はいない
女は残らず立ち去ってしまった
ここでは映画が観られないからだ
わたしはわが領土の砂山を愛する
風にしたがい日々姿を変える砂山を愛する
サソリなどの小生物が住む砂山を愛する
砂山はわたしの異境だ
わたしは……

 *  *  *  *  *

太陽黒点
斑らの黒点
思惟する黒点よ
考えよ
思考せよ
そして怒れ
●●を爆発させよ
僕たちを消し去るほどに
移動せよ
僕たちが捕捉しえない速度で
僕たちは速さだけを信じる

 *  *  *  *  *

思い出せば
懐かしき銀河鉄道

STだけの銀河銑道だったはずなのに
わたしのものでもあったのか
今更 そんな感慨がわたしを襲うのだ
「思い出せば銀河鉄遺」
とはどこかで聞いたセリフ

 *  *  *  *  *

銀河鉄道のために  

青年は荒野をめざす
 胸の奥には
怒りと悲しみと恐怖を携えて
きっと波らは救われないだろう
むしろ彼らは呪われることさえ望んでいることだろう
おお 神よ
 傍観者よ
わたしたちの先達よ
愛しいなら死を賜え
 呪うなら狂わせよ
 (涙こそ joker、闇に葬るA〜Z)

今明 入電!
    ……一九九九・〇一・三一、二二ジ。××××○○ノ、ホンヤクヤ、××××ノケンキュウデシラレル、ゲンダイシジン d'Eugene シガ、ボウコウガンノタメ、Tシシミンビョウインデシキョ。キョウネン四四サイ。ソウギ・コクベツシキハKシY一五五、キンボウジニテゴゼン  ジカラ。モシュハ、ツマI(アイ)サン。ジタクハ、KシY一二一。S二九ネンFウマレ、KダイFカヲチュウタイ。ダイガクザイセキチュウカラシサクヲハジメ、ジサツミスイニカイ、タサツミスイ四カイ。トウジカラハッキョウヲオソレラレテイタガ、S六二ネンニハツビョウ。セイシンブンレツビョウトシンダンサレル。シカシソノゴ、ダイヒョウテキシシュウ『KGRJGJK』ヲハッピョウ。サンブノデハ《I'm feces.》ガユウメイ。d'Eugene シノカダイハ、イマナオ……
 ……などてわれをつくりたまひし
 いかにぞわれあらむ
 いかにぞわれあらむととふ
  (詩集『KGRJGJK』から)

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