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田村隆一詩集『言葉のない世界』
天使
ひとつの沈黙がうまれるのは
われわれの頭上で
天使が「時」をきえぎるからだ
二十時三十分青森発 北斗三等寝台車
せまいベッドで眼をひらいている沈黙は
どんな天使がおれの「時」をさえぎったのか
窓の外 石狩平野から
関東平野につづく闇のなかの
あの孤独な何千万の灯をあつめてみても
おれには
おれの天使の顔を見ることができない
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