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田村隆一詩集『緑の思想』

飛ぶ

きみが眼ざめるとき
どんな夢を見る?
青いライオンに追いかけられて
地の果てまで?
それとも死んだ男と抱きあって
金色のウイスキーを飲みながら漂流する?

朝 二日酔の電話のベルが鳴る
きみは鉛の腕をのばす
ああ 怖い夢なんか見ていなかったのだ
青いライオンも
金色のウイスキーも

きみが眼ざめたとき
きみのなかではじめて眠りにつくものが
夢に見るだけ
ぼくにはうまく云えないけれど
人生のある一瞬には
地平線も水平線も見えない
夢だってあるのだ

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