伝説になりそこなった男
 奈良県池原ダム
2002年8月17・18日

 すでに池原ダムへ通いだしてから早二十数回。
 我々の目標はもちろん「ロクマル」とよばれる60pオーバーのバスを釣り上げることだが、我々はこれにさらに過酷な条件をつけている。すなわち「トップのプラグで60オーバー」というとんでもない、あるいは不可能かと思われる目標であったが、今回これまでは夢であった目標が一気に現実的になる出来事があった(らしい)。

 この日の釣行は「永遠のバス釣り小僧:よしべえ」氏と「池原初、一発屋:グッチー」氏それに「池原初バスをねらう:ミスター伊藤」氏との4名での釣行。しかし盆最後の土日でもあり、バンガローはすでに予約でいっぱい。我々も予約の電話を入れる20秒ほど前にキャンセルがあったらしく、うまくそこに入ることが出来た。
 ボートは毎度のヒライさんでレンタル。前回の宿泊釣行では寝坊したので、今回は遅れないようにしなければ!しかし、予約したときに「…今回も起こしにいきましょうか?」と言ってくれているので、安心なのだ!

 午前5時に出艇。今回は「よしべえ氏&伊藤氏」チームと「グッチー氏&私」チームに分けて乗船。まずは坂本筋を両岸に分かれて攻める。われわれは坂本ダム向かって左岸。
 坂本筋と備後筋合流地点から少し坂本ダム方面に上ったところから釣り開始。
 坂本筋は備後と比べてなんとなく深いような気がする。ポイントも岩盤が多く、ゴロタが少ないような気が。しかし、それだけに大物が潜んでいるかも…
グッチー氏が69番の下で一本掛けた。なかなかの引きだったが、痛恨のバラシ。しかし幸先よくバスが出てくれたので、一安心。
 が、この日の坂本筋は生命反応が感じられない。なぜか坂本筋はこんな感じを受けたときは釣果がかんばしくない。結局坂本筋では両チームとも一本もあげることが出来ずに場所を移動することにした。

 すでに午前の釣果が上がる時間を過ぎている。この日は晩飯の「超高級和牛ステーキ」をかけてポイント制で争っているのだ。ハンデは最近好調よしべえ氏が−3、私が−2、グッチー氏・伊藤氏がそれぞれ0から始まっている。

 この後、一度桟橋に戻る。バンガローのチェックインをしないといけないのだ。ちょうどヒライの大ちゃんがいたので、運良く平成の森駐車場まで運んでくれた。鍵を受け取り、作戦会議。この後は備後筋に入ることにした。
 桟橋に戻るとまだ大ちゃんが作業中。釣果などを聞くも今日はあまりあがってない様子。「きらきら光る系のクランクベイトなんかどうすかねぇ〜」とアドバイスをもらった。

 早速備後に移動。坂本筋との合流地点である最下流から攻めるが、風が強すぎ。坂本筋はちょうど風裏だったようで、エレキも最大出力にしないと進まないほど風が強い。これはと思い少し上流に上ってから風を利用しボートをドリフトさせて釣っていたが、よしべえ氏も同じように感じたらしく、しばらくすると「上流までいって下ってこようぜ!風でボート進まんやんけ!」といって上流に登っていってしまった。我々も釣りにならないので、上流に行くことに決定。エンジンを掛けようかと思ったらちょうど岩盤とカケアガリが重なった好ポイントが!備後に入ってすぐルアーはクランクに変更していたが、すかさずキャスト。ただ巻きで巻こうとリールを二回転くらいさせたところで、「グイグイ」とした引きが!思い切り合わせ、すばやく巻き取ったバスは38pのバスだった。
ありがとう大ちゃん
大ちゃんの忠告どおりクランクで上げました。ありがとう大ちゃん!あなたこそ我々の神です!!

 備後の上流に移動。ポイントはよしべえ氏が昨年48pを上げた階段向かい。我々は対岸の少し先まで遡上。ここから下りながらバスを狙うことにした。
 空には一面灰色の雲がかかり、いつ雨が落ちてきてもおかしくない天気。しかし、ぽつぽつとバスがルアーを追ってきている。釣果が上がる午後の時間に突入したのだ。
 この後、ルアーをポッパーに変更していたのだが、バイトはあるもののなかなか針に乗らない。よしべえ氏のボートは最初のポイントに張り付いたままだ。と思った時「★○@■▽!!□∞!!!」とよしべえ氏の解読不能な声が備後にこだまする。ふと朝の車の中での会話を思い出した。
 「今日は俺(よしべえ氏)と伊藤ちゃん、若(私)とグッチーの配舟やなぁ〜。」「山口(グッチー氏)は一発屋やからな!あいつが50オーバー釣ったらお前ライン切れ!」「それにしても、俺(よしべえ氏)網(ネット)ないからなぁ〜取り込みが心配やなぁ!伊藤ちゃん取り込みしたことないやろしなぁ〜」
 この会話どおりになったらしい。よしべえ氏のルアー(ポッパー)に移動後すぐにかなりの大物がヒットしたらしい。そいつの引きは明らかに40p代とは違う引きだった。当然リールは巻けない。カケアガリポイントだったので、よしべえ氏は少しずつラインを出しつつ少しずつ巻いてバスをいなしていた。何十分経過したかわからない頃、とうとう観念し、体力も使い果たしたバスがぽっかりとボートの横に横たわって浮いてきた。そのバスは明らかに50オーバー。よしべえ氏も久しぶりの50オーバーに心臓がバクバク言っていたそうだ。よしべえ氏のボートにはネットは無かったが、虫取り網はあった(なんで虫取り網かは内緒。)しかも白色のすぐ破けそうな安物網だった。がっちりフッキングしていたので、このまま引き抜こうか迷った末、虫取り網ですくうという結論に達したらしい。しかし、釣り上げた本人が「びびっている(よしべえ氏談)」のだ。初めて大物を目の当たりにする伊藤氏がびびらない訳はない。しかも伊藤氏の得物は虫取り網。白い網を差し出して、頭が入った瞬間「ブァシャ!!」「!!!」バスは最後の力で全身を跳ね上げた。このとき伊藤氏は網を横に引いてしまったらしい。フックは網に掛かり、その影響でバスはフックを外し、湖底へ消えていった…

 この日の釣果は私が38と25pを1本づつ。これのみだったが、よしべえ氏の大物の話を聞いて、今日は敗北です。
 夕食後、この話をしていたおかげで温泉の時間に間に合わず、風呂に入れなかった。じゃあどうしたかというと…男4人、水さえあれば体くらい洗えるものです。

 翌日は朝から雨、釣果もなく、寒さに耐え切れず盆最後の日曜ともあって渋滞も気になるので午前で早々に切り上げて帰ってきた。しかし、温泉「きなりの湯」に飾ってある調度60pのバスの剥製をみてよしべえ氏が一言「…これより絶対でかかったよなぁ…」
 かくして彼は伝説の男とはなれなかったのである。

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