クモガタヒョウモン雌は夏眠前に何日間活動するのか?


(2012年8月13日更新)

山城地域のクモガタヒョウモンは5月下旬から雄が見られるようになり、5月末から6月には雌の羽化も始まる。
丁度この頃入梅する年が多く、6月上旬に悪天候で野山に出かける機会を逸してしまうと雌に会えずに終わってしまうことになる。
6月も20日に近づくとクリやウツギの花はほぼ終り、すでにミドリヒョウモンやオオウラギンスジヒョウモンが現れ始めており、
クモガタヒョウモンの季節は早くも終りを告げてしまう。
他の蝶の場合は羽の痛んだ個体ならかなりの期間見ることができるが、ヒョウモン類の場合は休眠に入ってしまうので問答無用で終了である。
雄はまだしも、雌に出会うチャンスは本当に少なく、土日しかオフがない場合、一年にワンチャンスがいいところである。
こうしてみると夏眠前の新鮮な雌はまともに活動する日がどれくらいあるのだろうかという疑問が生じる。
羽化した頃に丁度大好物のウツギが咲いているというのも実に上手く出来ていると思うし、6月の後半には手頃な吸蜜源がなくなってきて、
まだそれほど暑くもなっていないのに長期の休眠に入ってしまうメカニズムも実に不思議で興味深い。
今シーズンはこのことを意識してメモを残していたので、少し検証してみようと思う。

「2012年山城メモ蝶」の内容に補足しながら5月下旬から6月下旬の状況をまとめると以下のようになる。

5月26日・・・イチモンジチョウがまだ出ていない。ウラギンヒョウモンも見ない。山間部のウツギは蕾多し。
−−−全体に蝶の羽化は1週間程度遅れ気味だったようだ。
6月2日・・・クモガタヒョウモン雄が出始め。ウラギンヒョウモンは見ない。イチモンジチョウがかなり出ている。
6月3日・・・前日と変わらず。オナガアゲハの新鮮な雌がまだいる。山間部はまだタニウツギが残り、ウツギはこれから。
6月4日〜5日・・・(多分)曇りがちの日が続く。
6月6日〜7日・・・恨めしい平日の好天。クモガタヒョウモン日和だったはず。6日が雌の出始めと判断したい。
−−−雌が一気に出揃ってきた模様。7日はクモガタヒョウモンの探索に好条件の今年最初の日。
6月8日・・・入梅。
6月9日・・・曇り時々雨。
6月10日・・・午後遅くからようやく晴れてきた。クモガタヒョウモン雌、ウラギンヒョウモン雌の良い時期。
−−−しばらく天気が悪かったためか10日は7日に引き続き雌雄共にウツギでの吸蜜が活発だった。
6月11日・・・午前中は比較的好天。蝶の探索には十分だったはず。
6月12日・・・梅雨空。蝶は飛ばなかったはず。
6月13日・・・曇り。探索日和とまでは言えないと思うがヒョウモン類の活動はあった模様。
6月14日・・・真夏日。絶好の探索日和。ヒョウモンシーズンのBestDayだっただろう。
6月15日・・・午前中はなんとか蝶が飛んだはず。午後からは梅雨空、夜は雨。
−−−15日午前中までは晴れ間には雌の活動が続いていたと思われる。
6月16日・・・梅雨空、時々激しい雨。
6月17日・・・天気予報では午後から回復?
6月18日・・・何とか蝶が飛びそうな曇り空。
−−−18日までの3日間はあまり天気が良くなかったが、晴れ間を縫って雌が活動していた可能性はある。
6月19日・・・台風4号接近。蝶は飛ばず。
6月20日・・・台風一過とはいかず朝まで雨。午後からヒョウモン類も飛んだ模様。ただしもうミドリヒョウモンの時期。
6月21日・・・雨。

以後もメスグロヒョウモンはすぐには休眠に入らずしばらく活動していたようだが、クモガタヒョウモンはどうやら15日で終了か。
遅めに見積もっても台風接近直前の18日までの活動で終わっていたであろう。
結局、活動日は18日までと考えても、
6、7、10、11、13、14、15、17、18・・・の9日間。
短く見積もって15日で活動が終わったとすると7日間しかなかったことになる。
このうち土曜日曜と重なったのは10日だけで、しかも日差しが出たのは午後14時以降であった。
期間にして6月6日〜18日の12日間。
今年は比較的天気が良い方だったと思うが、年によっては梅雨空が続くこともあるだろうから、
ほとんど活動しないうちに休眠に入ってしまうということも十分に起こり得るのではないだろうか。

以上のように、まともに活動するのは約10日間くらいであることがわかる。
こうしてみるとクモガタヒョウモンの雌に出会う機会が少ないのも当然といえば当然であると納得できる。

実際には羽化後5ヶ月くらいは生存している長生きの蝶であることを考えると、
羽化直後の最も美しさの際立つ元気な時期の活動日数の少なさというのは非常に勿体なく感じるし、本当に不思議なことである。
そこに存在する種を維持するための意味は何なのであろうか。