2013年 山城メモ蝶


2013年の探し納め

雨上がりは探しにくい・・・

木津川市山城町を夕方の短時間訪れました。
これが今年の「探し納め」かな・・・一年を振り返りながらのオオムラサキ探し。
雨上がりで落葉が黒く濡れて貼りついて探しにくいこと・・・。


落葉が濡れている時は探しにくい。オオムラサキ幼虫は健在。(木津川市)

それでも次々と幼虫が出てきました。
昔はどうしても見つけることができなかったエノキでも近年は見つかります。
今後は「いかにいそうにない場所で見つけるか」ということを探索のテーマにすべきかも。


城陽・井手の次は宇治田原・京田辺

エノキの落葉が遅すぎて・・・

ようやく空気が冬らしくなってきました。野山を歩いていると顔が冷たい。
今回はまず宇治田原から。
・・・・・・あれ、葉がほとんど落ちていない。色も緑に近いし。


師走でこの状態は驚きのエノキ。オオムラサキ幼虫は数頭確認。(宇治田原町)

探してみると幼虫は数頭見つかりました。数はともかく生息を確認できれば十分です。
画像のエノキ、他の方のblogにも登場しているような気がします。
今になって気づきましたが、気のせいかもしれません。

続いて京田辺市ですが、こちらも落葉が遅れています。
したがって根元の落ち葉の感じがもう一つ良くありません。
いつになくゴマダラチョウが多いような気もしました。
オオムラサキはそれなりに、まあ並という感じでしょうか。


ゴマダラチョウは成虫が多いと嬉しいが幼虫が多いと残念な気持ちになる。(京田辺市)


大物狙いは不発

紅葉の盛りのオオムラサキは・・・

忙しい時こそ山の空気に触れることが大切なようです。
このところダメ元でやや大物狙いに走り、
山城地域外に飛び出して行っては成果なく終わっています。

それで少し気分を変えようとやや早いかなと思いつつオオムラサキです。
エノキは意外と落葉していません。まだ葉は黄緑色です。
根元の落葉もほとんどなく、茶色い葉は昨年の落葉ばかり。
でも不思議なものですね。
数えるほどしかない落葉の裏にもう幼虫が降りていました。
まだ緑色の個体もいるし、すっかり冬色の個体もいるし。


大半はまだ緑色のオオムラサキの幼虫たち。(城陽市)

おそらくまだ樹の上にいる幼虫も多いことでしょう。
少なくとも今シーズンもオオムラサキは大丈夫な感じです。


久し振りに山に入る

ブナ林のフジミドリは・・・

しばらくの間忙しくて自然から遠ざかっていたので、
採卵やら運動やら気分転換やらを兼ねて出かけてみました。
2年振りのフジミドリシジミの探索です。


初秋のブナ林。山の温帯林はすでに秋の色に染まっていました。(京都府)

やはりブナ林での森林浴は心癒されます。
特にフジの採卵は森を歩くだけではなく、斜面にもぐって林床を泳ぎ回るため、
文字通りの森林浴となります。

肝心のフジミドリシジミですが・・・
今年も2年前に優るとも劣らぬ豊産ぶり。
朝から夕方まで頑張り続ければ100卵見つけることも十分に可能な感じでした。


フジミドリシジミの越冬卵。ダブルで見つかると余計に嬉しい。(京都府)

個体数の多い時には画像のように2個並んでいることもしばしば。
トリプルというのもあって、楽しい採卵になりました。
個体数の多い時にはついつい有り難味を忘れてしまいますが、
フジミドリは駄目な年には嫌になるほど見つかりません。
半日頑張って2、3卵しか見つからないとか、酷い時には卵殻1個だけということもありました。
今年のような状況には本当に感謝しなければいけません。


トレーニングの山歩き

足腰があまりに鈍っていた・・・


ベニヒカゲは最盛期で新鮮な個体が極めて多かった。(岐阜県)


よく見るとクモマベニヒカゲも混じっていてこの時期でも新鮮な個体ばかりだった。(岐阜県)

かなり標高の高い場所でオオゴマシジミにも出会いました。
採集道具も一眼レフも持たず、純粋な山歩きです。蝶はiPhoneで記念に数枚だけ撮影。
復路で早くも激しい筋肉痛。修行不足を痛感しました。


梅雨空の飛騨にオオイチモンジを追う・・・PART ????

続々・女神の降臨

拙サイトとしては例外的に京都府外での話を扱う「真夏の飛騨にオオイチモンジを追う」シリーズ。
今回は梅雨明けを認め難い状況下だったため少しタイトルを変えました。

今年は7月6日に気象庁が関東甲信越の梅雨明けを発表しました。
気象庁の梅雨に関する判断は納得できないことが多いですが、今年は少し焦りすぎではという印象です。
案の定、その後もスカッと梅雨明けという感じではなかったように感じます。
北アルプス方面の7月中旬の天気予報は梅雨そのものを思わせるものでした。

今年はいつもの年にも増してオオイチモンジの羽化時期を読むのが難しく感じました。
6月末には雄が出ていたという話も聞いたので、気が気ではありませんでした。
普通の年より羽化が早いことは確かなようなので、雌でも夏休みに入ってからでは多分遅すぎます。
雌の適期は例年より早めの7月中旬の3連休あたりではないかと考えられました。
自己流判断ではまだ梅雨は明けていないと思っていたので、何と言っても天気が心配でした。

・・・しかし、結局探索の日程は休日の制約を受けるので、いろいろ考えてもあまり意味はないのですが。
今回は休日前の20時まで目一杯仕事をして、帰宅して準備して、0時出発というハードな日程。
疲れ果てた状態での出発なので、睡魔との闘い。そして天気との闘い。
悪天はある程度覚悟の上でしたが、やはり天気が悪い!
残雪輝く3000m級の稜線は一日中雲の中。時々傘を開かなければならない情けなさ。
薄日が射しても持続時間は10秒ほど。風は妙に涼しく汗一つかかない。
こんな状況でオオイチモンジが飛ぶわけもなく、初日は姿も見ないまま終わってしまいました。


羽化したばかりのきれいなウラキンシジミに少し癒された。(高山市)

帰るに帰れず、迷わず現地泊。折角ならと一度利用してみたかった宿に泊ることにしました。
温泉に入りに行き、飛騨っぽい夕食を食べ・・・、とフルコースのオオイチ参拝になってきました。
部屋は幸運にもソファに座ってドロノキの枝先を眺めることができる良い位置にありました。
この木は高木と言ってよく、今までの観察ではオオイチモンジが産卵しているはずなのです。
窓は網戸が開けられない構造になっているので、もし見つけても部屋からの採集は不可能ですが・・・。
もっとも今回は雨模様なので木を監視していても枝から落ちる雫が見えるだけです。

・・・天気は相変わらずで、夜はザーザーと雨の音が聞こえていました。
二日目は初日よりさらに天気が悪かったかも。青空が見たい!
飛んでいる蝶は少なく、ヒメシジミ、ヤマキマダラヒカゲ、コキマダラセセリが見られた程度でした。
昨年は新鮮だったミスジチョウも今年はすでに羽が痛んでいました。


ミヤマハンミョウが元気なく石の上を歩いていた。(高山市)

もちろんこの日もオオイチモンジの姿など影も形もありませんでした。


ヒメシジミは新鮮な個体が多い。(高山市)

それにしても大ピンチ。宿泊までして、まだ女神様のお姿さえ拝めていないとは。
やむなく今度は道の駅での車中泊を決行。
夜の間、車の屋根を叩き続ける雨音を聞くのは辛かったなあ。

三日目の早朝も天気は悪い。ザーッと雨は来るし、オオイチモンジのいる谷の方は真っ白。
8時頃からようやく日が射し始めました。久し振りに見る陽の光、元気になるなあ。
雲は多いものの、ようやくオオイチモンジが活動するのに十分な状況になってきました。

最初に現れたのはオオイチモンジの新鮮な雄でした。上流の方から流れるように舞って来ました。
地面に降りて吸水するような気配がまったくなく、飛び続けていたいという感じ。
最近は雌だけに注力していたので、新鮮な雄は久し振りに見た気がします。雄は黒いなあという印象です。

そして・・・・・・、
ついにその時がやって来ました。

女神の降臨!
ドロノキの枝先に新鮮な雌がゆっくりと舞い降りました。
スローモーションのようにゆっくりと、葉の上で羽を広げたり、枝を歩いたり。
今年も瑞々しい姿を拝むことが出来たことにただただ感謝!


神々しいオオイチモンジ♀。やや大きめで新鮮な個体。(高山市)

その後は姿を見ることはなく、オオイチモンジは合計2頭の確認ということになりました。
今回は梅雨空そのものの天気に悩まされ続けました。
でも最後まで諦めなくて良かった!

ちょっと甘く切ない三日間の飛騨の夏?が終わりました。


ジャンダルムの姿も雲間から拝むことができた。(高山市)


オオムラサキの夏

梅雨が明けたら山城の宴は終焉・・・

このページはblogと違ってリアルタイム性は追求していませんが、
実際の季節に比べて周回遅れになってきており、今回はまだ7月初旬の話です。

宇治田原町へクロヒカゲモドキの探索に出かけました。
早朝、いきなり飛び出したのは今朝羽化したばかりの羽の柔らかい雌です。
羽化したばかりなので飛翔はゆるやかなのですが、
クロヒカゲモドキらしい敏感さはすでに備わっていて満足な写真が撮れませんでした。


どうしても羽に朝日が当たってしまったクロヒカゲモドキ♀。(宇治田原町)

この場所は出会う確率は高いですが、1回に1、2頭しか見ることができません。
新しい生息地も探しましたが、残念ながら見つけることができませんでした。


クロヒカゲモドキ♀。丸い翅形が雌の証。(宇治田原町)

クロヒカゲモドキの時期にはオオヒカゲはすでに旬の時期を過ぎています。
撮影にも採集にも力が入りませんが、オオヒカゲはいつ出会っても魅力的な蝶です。


だいぶ羽が痛んできたオオヒカゲ♀。(宇治田原町)

昼前からは、オオムラサキを見ようと木津川市に移動しました。
走行中の車の中からでもかなり高いところを滑空している個体を確認することができました。
車を停めて見上げていると、とある大きなコナラの木の付近を何頭ものオオムラサキが飛び交っていました。
首が痛くなるほどじっと見上げて観察していると、だんだん目が慣れてきてオオムラサキが見えてきました。
かなりの高所に樹液が出ているようで、少なからぬオオムラサキが幹のあちこちに止まっていることがわかりました。


枝で休息?するオオムラサキ♂。(木津川市)


かなりの距離がありピントも合っていないが、3頭が樹液に来ているのが確認できる。(木津川市)

今年はすでにやや時期が遅く、羽の痛んだ個体が多かったのが残念でした。
今度はもう少し早い時期に低い位置にある樹液の宴会場を見つけたいものです。


6月は最終日までヒョウモンを追う

宇治田原ショック癒えぬまま・・・

6月も終りに近づくと、ヒョウモン類の雌はオオウラギンスジとミドリにほぼ限定されてきます。
特に黒いミドリヒョウモンに何とか遭遇したいものだとあちこちに行ってみました。
南山城村でヒョウモン類の生息密度が高い一角を見つけて少し粘ってみました。


不思議なくらいヒョウモン類が多い小さな谷間。(南山城村)

ここには、ウラギン、ミドリ、オオウラギンスジとこの時期のヒョウモンが揃っていました。
もう少し前ならクモガタやメスグロも期待できそうです。
小さな崖にはミドリとオオウラギンスジがかなり執着していました。
残念だったのは雄が多い割に結局雌をまったく見かけなかったこと。
オオヒカゲも飛んでおり、なかなか良い場所で気に入りました。


ミドリ2頭、オオウラギンスジ1頭がやって来て活気のある崖。(南山城村)


崖で吸水?するオオウラギンスジヒョウモン♂。(南山城村)


葉上で休息?するオオウラギンスジヒョウモン♂。(南山城村)


葉についた鳥の糞で所謂吸い戻し行動をするオオチャバネセセリ。(南山城村)


足慣らしの山歩き

意外な場所でフタスジチョウと会った・・・


時々雲が上がってジャンダルムが拝めた。(岐阜県)


フタスジチョウ♂。ほぼ日本の西限の生息地と言えるだろう。(岐阜県)


宇治田原の奇跡 PARTU(悶絶編その3)

奇跡は続き、そして・・・

徹底的に打ちのめされたクモガタ探索。
次の土日にはクモガタは活動を休止して飛ばないかもなあ、などと鬱々とした日々を送っていました。
土日の前に平日に出張デーがあり、偶々「ウツギの小道」から車で30分ほどの場所でした。
出張が17時過ぎに終わり帰途に着こうとすると、外はまだカンカン照り。
ワンチャンス狙ってみるか!という気持ちになったのは言うまでもありません。
でも確率は5%、いや限りなく0%に近いのですが・・・。
しかしとにかくベストを尽くそうということで17時半に現地到着。
さすがにこの時間にヒョウモンというのは無謀か?
小道の入り口近くにあるウツギの繁みには幸い西日が当たっていました。


夕刻の奇跡が起きていたウツギの繁み。(宇治田原町)

通り過ぎようとすると・・・、
驚いたことにクモガタヒョウモン♀が羽を開閉させながら花に止まっているではないですか!
しかも今回もまさに目の前です。こんな夕方遅くに、こんな絶好の位置に。
おそらく前回採り逃がしたまさにその個体なのではないかと思えました。

奇跡が起きた!今度こそ採れる!

そんな確信も空しく、またしても力強く振ったネットにクモガタヒョウモン♀は入りませんでした。

5連敗!
とどめの一撃に茫然としながら日が沈んで暗くなった現地を後にしたのでした。

それでもクモガタヒョウモンが飛ぶ可能性がある6月16日までは力を振り絞って、
可能な限り「ウツギの小道」で時間を過ごしました。
最後にクモガタヒョウモンがいたのと同じウツギにはメスグロヒョウモン♀も現れました。
この時点で「目の前の蝶、振り逃がしの連敗」には終止符が打たれました。


「ウツギの小道」はやはりヒョウモンの小道だった。(宇治田原町)

しかし、ウツギの花が終わりに近づき、目に付くのがミドリヒョウモン♂ばかりになったとき、
ついに観念し、今年のクモガタヒョウモン探索を終えることにしました。


飛んでいるのも訪花しているのもことごとくミドリヒョウモン、こうなったら最高の時期は終了。(宇治田原町)

クモガタの次に出てくるメスグロヒョウモンは今年も個体数が多いようで、
京田辺市ではヒメジョオンの多い草むらを雄がいくつも飛んでいたり、
オカトラノオにやってくる個体を撮影したりすることができました。


メスグロヒョウモンのペア。雌の存在感は圧倒的。(京田辺市)


メスグロヒョウモン♂。オカトラノオにはミドリヒョウモンも来ていた。(京田辺市)

今年は蝶の羽化が早めなようで、メスグロヒョウモンが多かった日に
数頭のオオムラサキの滑空を見ることもできました。

「宇治田原の奇跡 PARTU(悶絶編)」にはこれで終りです。

なお、「宇治田原の奇跡 PARTT」は「山城の蝶昔話その3 クモガタヒョウモンの奇跡」を参照してください。


宇治田原の奇跡 PARTU(悶絶編その2)

「目の前の蝶」4連敗、そして・・・

宇治田原町での20年振りのクモガタヒョウモン♀との再開と大失敗・・・。
この日は、午前中和束町でも目の前の葉に羽を閉じて静止したクモガタヒョウモン♀に
撮影も採集もできないままに逃げられるということがありました。
そんな日だったので悶々とした気持ちで「ウツギの小道」での時間を過ごしていました。
そんな時今度は突然見慣れない蝶が飛んできて目の前のクヌギの葉に止まりました。
羽を閉じて微動だにしなくなったその蝶はメスグロヒョウモン♀!
宇治田原町で初夏の新鮮な雌に出会うのは初めてでした。
「これも目の前、やや枝が込み入っているが、これは採れる!」
そう信じて力強くネットを振るより一瞬蝶が飛び立つのが早く、またしても逃げられてしまいました。

どうしても採りたい「目の前にいる」蝶に対して3連敗!

完全に自信を失ってしまい、採りたいと思う気持ちがある限り永久に採れない気がしてきました。
夕方になってしまったので「ウツギの小道」を後にし、下見を兼ねて別の場所に立ち寄ってみました。
到着してかなり高い位置のウツギを見上げていると、何とミスジチョウが飛んでいました。
ミスジチョウは宇治田原町では初めて見る蝶です。
やがてその個体は高い位置のウツギの花に静止しました。多少羽が破損しているのが下から見てもわかりました。
長竿なら十分に届く距離で、位置的にも十分捕獲可能と思われました。
急いで竿を準備して慎重にネットを振ったのですが・・・、どうも長竿は苦手です。
やはりうまく採れませんでした。飛び立ったミスジチョウは高い場所を飛ぶばかりで
ついに採集不能な高所で落ち着いてしまい時間切れ。

これで4連敗!

この「宇治田原の奇跡 PARTU(悶絶編)」にはまだまだ続きがあります。

なお、「宇治田原の奇跡 PARTT」は「山城の蝶昔話その3 クモガタヒョウモンの奇跡」を参照してください。


宇治田原の奇跡 PARTU(悶絶編その1)

感動の再会、そして・・・

今年の気象庁の入梅宣言は異常に早くて5月29日。
近年入梅や梅雨明けの発表があまりにいい加減なので、ほとんどあてにはしていませんが、
6月前半でまともに雨が降ったのは15日の午後だけでした。
この間にやや遅れていた蝶の羽化がかなり前倒しになり、むしろ例年より早くなったようです。

今年はアカシジミが多いとかウラナミアカシジミも復活だとか
ゼフ関係の良い話が多く、確かに野山に出ると必ずアカシジミを見かけました。
こんな年こそ山城のウラミスジシジミを何とかできるかもしれません。
しかし、5月終わりごろから頭の中はヒョウモンで占領されてしまいました。

まずはクモガタヒョウモンです。
5月25日の時点で和束町のウツギは蕾でクモガタヒョウモンの姿はありませんでした。
イチモンジチョウもほとんどいませんでした。

6月1日に和束町でウツギが咲き始め。ヒョウモン類はウラギンヒョウモン1♂を確認しただけ。
今年はヒョウモン類が少ないのかなと心配になってきました。
今年の異変はコチャバネセセリが異常に少ないこと。キタテハもいません。
そのためかウツギの周辺が寂しい感じです。

6月8日、和束町でようやくクモガタヒョウモン♀を確認しました。
他にはメスグロヒョウモン1♂、ウラギンヒョウモン1♂だけ。
見たヒョウモンはこの3頭だけで、どうも昨シーズンのような賑わいがありません。
ヒオドシチョウがいつもより多く見られる程度です。

ここで和束町を諦め、昨年秋に目をつけていた宇治田原町の「ウツギの小道」を見に行くことにしました。
道路の両側がウツギだらけという夢のような場所です。
当然秋には花はなかったのですが、果実(の残骸)の多さに驚き、
「もし宇治田原町にクモガタヒョウモンが生き残っているなら必ずここに現れるに違いない!」
と思えるような場所だったのです。

実際に訪れてみると、・・・
イメージした通り道の両側はウツギの花で真っ白でした。
これではむしろ多すぎるくらいだわな!なんて贅沢なことを考えながら進んでいきました。


まさに「ウツギの小道」。(宇治田原町)

前方に道に迫り出すように伸びているウツギの枝があり、先端の花にオレンジ色が・・・

クモガタヒョウモン♀が羽を開いて訪花している!
「おった、おった、おった・・・イターッ!」と叫びながら車から飛び降りまいsた。
宇治田原町でクモガタヒョウモンを見なくなって何年経つでしょうか。
雌となると1993年に会って以来なので20年振りということになります。
20年、人生の四分の一・・・。すごい年月です。
しかも昨年から温めて来たイメージ通りの光景が目の前で現実のものになっている・・・。
これは奇跡としか言いようがありません。

地上1.8m、目の前です。どう考えてもキャッチできる状況でした。
事実、力強く振ったネットに見事蝶は入り「採ったー!」と叫んだのです。

しかし・・・、
次の瞬間、道路に伏せた網の隙間から蝶は器用に逃走!

・・・・・・!
なぜもっと深く追い込まなかったのか? 慎重に振舞えなかったのか?
何を考えても後の祭り。それだけ平常心を失っていたのでしょう。


路上に飛び散った白い花弁が敗戦の跡。(宇治田原町)

その後、日暮れまで付近で粘りましたが、クモガタヒョウモンは二度と姿を見せませんでした。
この「宇治田原の奇跡 PARTU(悶絶編)」にはまだまだ続きがあります。

なお、「宇治田原の奇跡 PARTT」は「山城の蝶昔話その3 クモガタヒョウモンの奇跡」を参照してください。


初夏間近の山城を歩く

アオバセセリは今年も好調

平日が好天続きだと週末の蝶は今一さえない場合が多いです。
先週オナガアゲハが飛び始めていた和束の谷に行ってみたところ、
なぜかオナガアゲハは全然だめ。いよいよ最盛期で雌も出ているかなと期待したのですが。
その代わり、先週は姿のなかったアオバセセリがいくつも飛んでいました。
この場所は撮影が困難なのが欠点ですが、アオバセセリの観察には最高です。

帰りに木津川市に寄ってみると、場所によってはすでにウツギの花が咲いていました。
夏がチラチラと見えてきました!


ウツギが咲くと夏の入り口。和束ではまだ小さな蕾だった。(木津川市)

大きなイヌビワの木にはイシガケチョウの幼虫がいました。
葉もよく繁りロケーションも最高に思えるイヌビワなのですが、幼虫の見つからないことが多い木です。
まだ小さい幼虫がほとんどで大きな終齢幼虫は見つかりませんでした。


独特の食痕を作るので見つけやすい。まだ小さな褐色の幼虫が大部分。(木津川市)


最も成長していた幼虫。イシガケチョウらしい奇怪さが現れてきている。(木津川市)

先週少なかったコジャノメは今回も少なく期待外れに。
それにしてもコジャノメは敏感で逃げ足が速くて苦労します。


コジャノメは暗い場所に静止することが多く敏感でもあるので撮影しにくい。(木津川市)


新緑の和束を歩く

やっと休日と快晴が合致・・・

快晴で空気は澄み、山々の立体感が際立つ探索日和の一日。
和束の谷の春は低地よりやや遅めですが、新緑が美しく気持ちのいいことこの上なし。


谷の新緑が青空に映える。(和束町)

まだ蝶は少なく、コチャバネセセリやアオバセセリは羽化していないようで、
アゲハ類もこれから本番という感じでした。


ミドリセンチコガネの元気な飛行があちこちで見られた。(和束町)

アゲハ類では最初にカラスアゲハの雌に出会いました。不思議と雄の姿は見ませんでした。
場所を変えるとオナガアゲハがすでに飛んでいて10頭ほど目にしましたが、すべて雄でした。
今年は4月が寒かったので、オナガアゲハはまだ出始めといったところでしょう。


ミヤマカラスの影に隠れがちだがカラスアゲハの雌も美しい。(和束町)

晩春の蝶と言えば、コミスジが今年は少ないようです。
コミスジが多い年はミスジ系やイチモンジ系のタテハ類が好調だったので気になる蝶です。


コミスジは満足できる写真が撮りにくい蝶ではないだろうか。この個体は羽が石に触れ過ぎ。(和束町)

探索を終えてから「ヒカゲの楽園」の様子を見に行きました。
昨年のシーズン後、獣除けの柵が張り巡らされたようなのですが・・・。
予想通り、素朴だったコースが柵で台無しになっていました。「ヒカゲの楽園」は過去のものになったようです。
柵の設置のため木々が伐採されて明るくなってしまいました。
それでもクロヒカゲはまだ見られましたが、これらは昨シーズンの遺産に過ぎないかもしれません。
奥のウラナミジャノメやオオヒカゲの生息地にはむしろ入りやすくなりました。
しかし、このコースは柵の外側のため今後手入れされずに荒れ放題になる可能性があります。
そうなると気持ち悪くて歩く気にならなくなりそうです。
正規?の農道は柵で閉められてしまって部外者は入れなくなりました。これはとにかく不便。
このような場所が急速に増えているのは本当に困ったことです。


道の右側にあった木々は伐採されて柵に置き換わった。左側の木々もかなり伐られていた。(和束町)


大雨被害の爪痕

美しい渓流はいつ戻るのか・・・

宇治市の林道をあちこち回ってみました。
宇治市の山間部は昨年夏の大雨で大きな被害を受けました。
その爪痕は今でもくっきりと残っていて、あの日に起こっていたことを想像すると怖ろしくなります。
美しかった渓流は無残な姿を晒しており蝶がどうのこうのという状態ではありませんでした。


美しい渓流の風景が一変。ガードレールがぐにゃぐにゃになって落ちている。(宇治市)

上の画像の場所はコクサギが大変多く、カラスアゲハ、オナガアゲハが集まり、
時にはミヤマカラスアゲハもやってくる素晴らしい場所でした。
「山城蝶類図鑑」のサトキマダラヒカゲのページの画像で、
蝶が止まっているガードレールは上の画像で川に落ちているガードレールです。
蝶たちはいつ戻ってくるのでしょうか。
大好きな場所だったのであまりにも喪失感が強いです。
このような状態の場所が延々と続き、また広範囲の至る所に点在していました。
川沿いだけでなく山腹も痛みが酷く、緩く谷状になっている場所では
水が出たり、土砂が流れたりしたことがはっきりと見て取れます。


岩の間から水が滴り落ちていたあの美しい場所が・・・。(宇治市)

宇治市のオオムラサキの探索はますます難しくなりました。


オオムラサキで来シーズンを占う PART W

探索は北へと進み・・・

城陽以南の様子は大体見て回ったので今度は北に目を向けます。
宇治田原町は広く生息するようですが密度は低い地域です。
一番困るのが手頃なエノキが手頃な場所に少ないことです。
今回もこれは!という木は見つかりませんでした。
ようやく見つけたのは、木の高さや周囲の環境が今ひとつぱっとせず、
小さな川を越えなければならない面倒な位置にあるエノキでした。


位置も悪く落葉も少なく期待薄のエノキ。幼虫は左の木にいた。(宇治田原町)

手を泥だらけにして苦労して根元まで到達してみると、ろくに落葉がなくてがっかりです。
ただ日当たりの具合だけはオオムラサキに向いているように感じました。
それでも少ないながら幼虫は見つかりました。ゴマダラチョウも1頭だけいました。


こんな木にもいるのなら、もっと良い木があれば・・・。(宇治田原町)

これで今シーズンの探索も少し北進し、もうひとがんばりと言うところまで来ました。