2015年 山城メモ蝶


今年の探し納め近し

ミスジチョウの少なさの不思議

早くも天気次第では年内の探し納めになるかもという時期。
山城東部山地でミスジチョウの幼虫を探してみました。
ミスジチョウの成虫は活動場所が高いため、観察が容易ではありません。
越冬中の幼虫はじっとしているので探索は容易なのですが、如何せん個体数が少ない。
今回は2本のモミジの木から各々1頭ずつという結果でした。


幼虫の静止ている枯葉は遠目にも雰囲気でほぼわかる。(綴喜郡)

夏にメスが1個しか産卵していないということは考えにくいので、
越冬までに天敵の餌食になってしまったり、風で飛ばされてしまったりするのでしょうか。
ミスジチョウの個体数の少なさは、幼虫期の生存率の低さが原因なのかもしれません。


いつのまにか採卵、採幼シーズン

フジミドリは大不作、オオムラサキはまずまずか?!

10月にフジミドリの採卵を試みました。
一昨年は三桁も可能かという大豊作、昨年は一転不作でした。
今年は昨年以上の大不作です。
これでもう採卵に行く気がなくなりました。

オオムラサキはどうでしょうか。
今年は11月〜12月前半が異常に暖かく、紅葉も遅れたし、しかも美しくなかったようです。
エノキの落葉も遅く、12月10日を過ぎても黄緑色の葉が多く残っていました。


12月半ばでもエノキには黄緑色の葉が多く残っている。(井手町)

オオムラサキの幼虫はやや多め、ゴマダラチョウも昨年より多いようです。
来年シーズンのタテハの状況を占う指標?としているので、まずはホッとしました。
数の少ない城陽市でもそこそこ見つけることができました。


クズの落葉にオオムラサキ3頭とゴマダラチョウ1頭が見える。(井手町)


ジャンダルムから高山蝶の棲み家を眺める

純粋な登山に挑む・・・

高山蝶に会うために山には行くし、山は好きですが、登山そのものや登頂には興味がありませんでした。
ところが、2011年に新穂高で山影から覗き見えた異様な稜線に心奪われました。
それにやや左側に見える滑り台のような沢も印象的でした。
その異様な稜線がジャンダルム、滑り台のような沢が白出沢でした。
白出沢はタカネキで有名であるし、その拠点は新穂高です。
学生時代に右俣林道の出会いまでは行ったこともあります。
当時は稜線などには目もくれず、オオゴマシジミばかり目で追っていたようです。
調べてみると、新穂高から右俣林道経由で白出沢に入り、沢を登り切って穂高岳山荘までたどり着けば
山小屋で一泊して翌日ジャンダルムまでの往復ができそうでした。
しかし、問題が2つ。
1つは白出沢の登りがとんでもなく厳しそうであること。鈍った体力で登り切れるのか?
2つめは奥穂高岳から先が危険なルートであるらしいこと。馬の背、ロバの耳、絶壁のトラバース・・・
登山用具も必要。白出沢は8月前半まではアイゼンがいるようだし、ヘルメットも?
山小屋泊のためのザックやトレッキングシューズも新調しなければ。
2013年8月、白出沢の下見。
そしていよいよこの夏挑戦しました。


ここから見たジャンダルムは遠いけど一番凄い!(岐阜県)

ようやく到達したジャンダルムの頂は異次元空間。好天にも恵まれ360°の大パノラマ!
ここでは高山蝶の棲み家の一部を紹介します。


奥穂高岳からのジャンダルム。荘厳な佇まい。(岐阜県)

ジャンダルムは見る方向によって様々な表情を見せる。上高地など信州側からはわかりにくい。


笠ヶ岳方面。タカネヒカゲやタカネキなどの棲み家。眼下に右俣谷、中崎尾根の向こう側が左俣谷。(岐阜県)


焼岳、乗鞍岳、御岳山方面。オオイチモンジやクモベニなどの棲み家。(岐阜県)


上高地、霞沢岳方面。高山蝶のメッカ。(岐阜県)


槍ヶ岳、双六岳、黒部五郎岳、遠くに白馬連山。タカネヒカゲなどの棲み家。(岐阜県)


常念岳、蝶ヶ岳方面からの御来光。タカネヒカゲ、ミヤマモンキなどの棲み家。(岐阜県)

登山の途中で出会った蝶は、クモマベニヒカゲ多数とベニヒカゲ多数の2種でした。


真夏の飛騨にオオイチモンジを追う PART ?????

2年連続の大不作にあえぎつつ・・・

今シーズンも昨シーズンに続いて有能かつ強運なパートナーを伴って二泊三日での挑戦。
昨年は雄の姿さえ拝むことも出来ないまま敗退。
あんな不作が続くことはないだろうとの期待を秘めての飛騨の夏です。
残念ながら最初の二日間は天気が悪く、ほとんど手も足も出ない状態。
ようやく晴れたのは最終日だけでしたが、雨上がりということもあり好条件が整いました。


このドロノキには一日1回は雌が来るはず。(岐阜県)

しかし・・・どうも様子がおかしい。オオイチモンジが現れるような気配が全く感じられません。
朝方、雌らしき個体が飛び去るのを数秒間目で追ったのが唯一の目撃。
これとて100%オオイチモンジであるという確信は持てませんでした。
どうやら今シーズンも相当な不作であることは間違いありません。
他の蝶で気になったことは、ヤマキマダラヒカゲが全く見られなかったこと。
この蝶はオオイチモンジの時期には多数の新鮮な個体が林道周辺にたむろしているなずなのですが。
このような脇役がいるかいないかは意外と重要なことのような気がします。


ドロノキの監視を続けるも時間だけが過ぎていく。(岐阜県)

結局、姿を見ることがないままに三日目が暮れてしまいました。
それでも、飛び回るゼフを二人でわあわあ騒いで採集したり、
美味しい御飯をお腹一杯頂いたり、楽しい飛騨の夏でした。


一日目は飛騨牛のしゃぶしゃぶ、二日目は飛騨牛の陶板焼きがメイン。(岐阜県)

特別に用意していただいたお昼のお弁当が有り難かったです。

さて、今シーズンの飛騨のオオイチモンジの総括を少し。
何よりも稀に見る不作、昨年以上の大不作であったことは間違いありません。
上高地でも個体数はかなり少なかったようなので、もともと少ない場所では当然かもしれません。
時期もよくわからず、羽化が集中するベストのタイミングがなかったような気がします。
6月に雄が出ていたという話もありましたが、例年より特別に羽化が早かったとも思えません。
7月の間ずっと粘っていたような方でも成果は上がっていないようでした。
採集者の動向にも変化を感じました。
今まで私たちが採っていた場所はほとんど人が来なかったのですが、
3年くらい前を境に様子が変わってきたのです。
このことはここではあまり具体的には書けませんが、ちょっと嫌な感じなのは確かです。
とにもかくにも・・・・・・オオイチモンジ雌との遭遇理想の4条件を意識して、
これからもマイペースで探索を続けていくしかありません。

【オオイチモンジ雌との理想の遭遇4条件】(2011年版「真夏の飛騨にオオイチモンジを追う」より)
・抜けるような好天の青空の下、残雪の高山を背景に
・登山者や採集者のいない林道から外れたひっそりした場所
・ドロノキの小木の地上2m以下の葉に雌が訪れる
・雌は極めて新鮮で黒々とした目の覚めるような個体

なお、今シーズンはオオイチモンジ雌に出会うことが難しかったものの、
不可能だったわけではありません。いなかったわけではないのです。
次ようなblogに今シーズンの雌が登場します。

●blog「蝶に魅せられた旅人」より「捕虫網の円光『奥飛騨慕情1〜11』」
7月25日に雌が採れています。破損の目立つ個体です。blogが大変面白いです。
●深山荘のblog 2015年7月21日
画像の雌はすごく立派に見えます!7月20日か21日に採れた個体でしょうか。
深山荘はまさに7月20日に日帰り温泉を利用したんだけどなあ!

なお、リンクの許可をもらっていないので、アドレスは載せません。


メスグロを追う初夏(PART U)

雌はどこに・・・?

京田辺の「ヒョウモンの丘」で今シーズン確認できたメスグロヒョウモン♀は3頭のみ。
そのうち捕獲のチャンスがあったのは、オカトラノオに来ていた1頭だけで、
その個体もネットを振り始めた瞬間に飛び立ち、身軽な動きに翻弄されて振り逃がす始末。
その♀は近くにあるクヌギの樹の高所に舞い上がってどこかに潜り込んでしまいました。
いつものことながらメスグロの雌には苦労させられます。
諦めきれず数日後同じオカトラノオを再訪。やはりちゃんと訪花している!それも絶好の位置。
しかし・・・・・・・・・また逃げられました。
外観や雰囲気から判断して、最初に振り逃がしたのと同一個体です。
今回も前回と同じクヌギの樹の高所に舞い上がって姿を消してしまいました。
どうやら、雌は樹上で休んでいて、お腹が空いたらお気に入りの花のあるところにやってきて
また樹上に帰って行く・・・ということを繰り返しているようです。


左側にあるクヌギの樹上と右下にオカトラノオを往復しているらしい。(京田辺市)

意地になって、また一週間後同じ場所を見に行きました。
やはり同じ個体が花に来ています!
すでに最初の出会いから二週間が経っているため、目の覚めるような羽の瑞々しさは失われています。


二週間のお付き合いになったメスグロヒョウモン♀。(京田辺市)

ともあれ、ようやく決着をつけることができました。
これで今シーズンの山城地域でのヒョウモン探索はほぼ終わりです。


オオヒカゲが湧き出した!

過去最高の個体密度か?

現実の季節は秋めいて来ていますが、このページはようやく初夏です。
ぼちぼち追いついて行きます。

オオヒカゲは近年どちらかというと勢力を増している種です。
昔からシーズンに1回くらいは見に行っている加茂町の産地を訪れてみると・・・。
いつもの年は姿を見ないか、2、3頭飛び出して終了、という場所なのですが、
今年はびっくり!無尽蔵と言えるほどに次々と飛び出してきました。
羽化が集中した絶好のタイミングに当たったようです。ものすごい数です。


異例の高密度で見られたオオヒカゲ。(木津川市加茂町)

蝶との出会いは日和とタイミングと運だなあと感じさせられた一日でした。


メスグロを追う初夏(PART T)

豊産はいつまで・・・?

山城地域でメスグロヒョウモンは基本的に数が少なく採りにくい蝶です。
たまに多く見られる年がありますが、普通は滅多に見かけません。
ここ数年は多く見られる周期に入っているようで、昨年が一つのピークであったように感じます。
今年はだいぶ落ち着いてきたようで、そろそろ出会いが困難な周期に入るのかもしれません。


オカトラノオを訪れたメスグロヒョウモン♂。(京田辺市)

京田辺の「ヒョウモンの丘」では、直近の2年間ほどではないですが、
雄はそれなりに多くの個体を見ることが出来ました。
しかし、雌に関しては6月後半、しつこく頑張りましたが、結局確認できたのは3個体のみ。
その間、成り行き上、特定の雌を追い続けることになり、
雌の生活の一端が見えてきたのは収穫でした。楽しい半月でした。
6月も末になるとオカトラノオの主役はオオウラギンスジヒョウモンと交代です。


オカトラノオを訪れたオオウラギンスジヒョウモンョウモン♂。(京田辺市)


追い続けることになった雌の吸蜜場所である小さな草地。(京田辺市)


宇治田原のクモガタヒョウモンとの再会

何年振りかなあ・・・

拙サイトに登場する宇治田原の「ウツギの小径」。
驚いたことにとうとう採集者が現れました。以前から来てるようなふうに言われてましたけど、
去年までは明らかに誰も来ていなかったので、やはり拙サイトがネタ元なのかな?
環境写真を掲載しているからには、場所を探し当てて誰かが来るのは承知の上ですが、
こんなつまらない場所までもとは!良い待機場所にはタバコの吸い殻が一杯あったし・・・!
2年前に雌を見事振り逃がして涙を飲んで以来、結局採集に至っていないクモガタヒョウモン。
今年はついにキャッチ!落ち着いてウツギで吸蜜してくれないので苦労しました。
残念ながら雌は6月中旬まで何度も足を運びましたがお目にかかれませんでした。


複数採れたクモガタヒョウモン。(宇治田原町)

今年は5月にイチモンジチョウとアサマイチモンジの新鮮な個体が多数見られた日がありました。


産卵するアサマイチモンジ。(宇治田原町)

6月に入ると、クモガタヒョウモンの姿は見なくなり、イチモンジチョウなども急減してしまいました。
春先の季節の進行が早かった今年は「ウツギの小径」の旬は5月下旬だったようです。


超久し振りの瓜生山

年月を経て木々が繁ったなあ・・・

「山城の瓜生山」に続いて、北白川の本家瓜生山へ。
有能なるパートナーと一緒にランチ持参でのんびりと出かけました。
山頂にはすでに学生さんが一人、長竿を構えておられました。
蝶研の人かな?と思ったら、何と大阪に帰省中の早稲田の学生さんでした。


赤いネットの早稲田の学生さん、気合い十分でした。(京都市左京区)

天気が今ひとつ良くなく、ミヤマカラスの飛来は15分間に1回くらい。
時期的にはやや遅く、羽の痛んだ個体が多かったようでした。
その代わりアオバセセリは新鮮な個体が枝先で縄張り飛翔を繰り返していました。


アオバセセリは今日羽化したばかりのような美しさ。(京都市左京区)

山頂の木々はさすがに高く繁り、やや暗くなっていましたが、
昔と変わらない雰囲気の中、のんびり過ごして下山しました。


集まるのはミヤマカラスのみならず

蝶の縁の不思議・・・

2015年は春先の季節の進行が早く、ミヤマカラスも一週間ほど早くから出ていたようです。
新調した長竿を試すべく「山城の瓜生山」へ。
ここで懐かしい出会いがありました。最初に出会った時、彼はまだ小学生でした。
今は小学生のお子様と父子でミヤマカラスを追って来られたのです。
大人たちが感慨にふけっている間にお子様が見事ミヤマカラスを仕留めました!


お子様が採集した新鮮なミヤマカラスを手にするお父様。

ミヤマカラスは昨年同様時々やってきて私たちをドキドキさせてくれました。
比較的低いコースを素早く飛んで来るのはカラスアゲハで、慣れるとすぐに区別が可能です。


お子様に負けじと採集したミヤマカラスアゲハとカラスアゲハ。

それにしても、長い時を隔てての再会。ミヤマカラスも集まってきますが、
蝶好きもまた、こんな狭い所に集まってくるのですから不思議なものです。