2017年 山城メモ蝶



恒例の締めくくり

冴えなかった今シーズンを振り返りつつ・・・

いろいろとすっ飛ばして、秋から冬へ。
このところオオムラサキの生息状況は安定していて、心配な要素は少ない。
山城地域の分布調査も概ね終了しており、最近はお気に入りの場所を見に行くだけ。
昨シーズン、山城地域での最高記録が出た井手町のエノキを最初に見に行った。
昨年の三分の一程度であったが、それでも十分多くの幼虫が見つかった。


落葉が少ない11月下旬にも多くの幼虫がすでに木を降りている。(井手町)

一方、木津川市山城町ではさっぱり見つからず、12月を前にすっかり探索意欲が減退してしまった。
今年の最後に、近年あまり成果のあがらない城陽市の生息地を訪れてみると、
いきなり一番有望な木で全く見つからず、出鼻をくじかれた。
少し余計に歩かねばならいが、当たったこともある木を見に行くと、ようやく確認することが出来た。


幹の股に溜まった落葉から次々と幼虫が見つかった。(城陽市)

この木は以前、幹の股に溜まった落葉から幼虫が見つかったので、まずそこから探してみると、
今回も続々と幼虫が見つかった。その代わり、根元の落葉からは全く見つからなかった。
木の立地条件などによるのだろうが、こういうこともあるのだなと不思議に感じた。


初秋のブナ林へ

紅葉シーズンには早いが・・・

今年の秋は穏やかで紅葉もまずまず美しかった。
11月は寒く、京都山間部の降雪は早めだっ印象。
フジミドリシジミ越冬卵の探索は、本格的な雪が降ってしまうと大変なので、
11月前半までに終えたいところだが、今シーズンは10月前半に訪れた。
森はまだ青々としているものの、フジミドリの探索には特に支障はない。
京都の山はどこでもそうであるように、ここも年々林床の笹が減っていく。
今年はもうほとんど笹がなくなってしまっている。


林床には笹の枯れた茎しか残っていない。(京都府)

フジミドリの生息するブナ林は大体急斜面で滑りやすく、脚腰へ負担が大きい。
一度降りた斜面を登り返すのは大変億劫であり、そうそう何回も往復できるものではない。
以前は笹をつかみながら移動できて助かったが、今や手がかりが少なく相当腰にこたえる。
何回も滑って尻餅をつきながらの探索になる。
フジミドリは豊作とまでは言えないが、まずまずいい感じで産卵されていた。


中央に1卵。まだブナの葉は黄葉していない。(京都府)

昨シーズン気づいたのは、急斜面を登降し奮闘するだけが能ではないということ。
人がバカにして探さないようなところでも、環境が良ければ十分に卵は見つかる。
今回は、約半数を比較的に楽に入れる場所で見つけることが出来た。
楽、と言っても急斜面であることには変わりなく、終了時にはヨレヨレ状態であったが。


真夏の飛騨にオオイチモンジを追う PART?????

連敗は止まるのか・・・?

2014年〜2016年、自分の状態はこの上ない好条件だったにもかかわらず、
肝心の蝶がひどい不作で3連敗を喫してしまった。
もういい加減止めておけばいいようなものだが今年も懲りずに。
今年は、時期は雌には少し早いかもという感じで、
天気は梅雨時で良くはないが、まずまずである。
初日の朝は周辺の山々の稜線もくっきり姿を現してくれた。
同好者はそれなりに見かけるが、意外に少ないようだった。


焼岳もくっきりと姿を現わし、空の色も良い。(高山市)

蝶の方は、天気や気温の割に数が少ない。
群れ飛んでいて欲しいヤマキマダラヒカゲやコムラサキなども少ない。
キバネセセリやミスジチョウの鮮度から判断すると、やはり蝶の羽化は遅れ気味だ。


ポツポツと蝶が活動を始めたが、数は少ない。(高山市)

女神が現れる気配がまったくないままに、あちこち見て回っていると・・・
ドロノキにまとわりついているオオイチモジを発見。
あれはどう考えても雌やろ!と走っていくと・・・
あれ?何かおかしい、雄かな?
この、性別を確認しようとする2秒ほどが無駄だった。
とにかく捕獲してみようと思った瞬間に飛び去られてしまった。
この個体は新鮮な雄、ドロノキに絡む雄であった。
同じようにドロノキに絡むのでも、雄と雌とでは飛び方が異なる。
雌は産卵が目的なので、適した葉をじっくり探そうとし、
時には葉に捉まったりもして、木への執着が強い。
一方、雄の場合は「探雌」が目的で、あわよくば羽化直後の雌はいないかという感じで、
飛び方は速くせわしなく、葉に止まることもない。


新鮮な雄が絡んでいたドロノキの小木。(高山市)

これでオオイチモンジが出ていることは確認できたが、
雄の出始めにような雰囲気もあり、はやり雌には少し早いのかもしれない。
その後は、ドロノキでの待ち伏せ作戦を諦め、徘徊作戦に転じたが徒労に終わった。
河原の石で吸水していた新鮮なコヒオドシが、唯一の収穫だった。
今回は2泊3日の探索だったが、残り2日も女神の降臨はなかった。
同好者は何人か来ておられたが、成果を上げている方には出会わなかった。
訪れる者の期待は大きく、成果は乏しくという場所になりつつあるのか・・・。


トラップを設置して雌を待つMさん。(高山市)

当地に詳しいMさんも苦戦続きとのことであるし、
この先、状況が好転することがあるのか大いに不安である。


イチモンジチョウ(高山市)

同じ「イチモンジ」でも、ここには、オオイチモンジだけではなく、
イチモンジチョウやアサマイチモンジも少ないながら生息している。
今回、画像のようにイチモンジチョウが新鮮だったので、
オオイチモンジの時期としてはやや早かった可能性はある。
しかし、一般にイチモンジチョウより羽化が早いはずの
アサマイチモンジの新鮮な個体を見た日に
オオイチモンジ雌が出ていた年もあり、
このような亜高山帯での蝶の羽化時期には平地の理屈は通用しないのかもしれない。


ヒメシジミの交尾。(高山市)

・・・ということで、見事4連敗。
蝶研の現役生であると仮定すると、学部4年間に一度も女神を拝まず卒業ということになる。
限られた人生の年月を考えても、大きな連敗ではある。


飛騨へ夏の下見に

飛騨にも良からぬ予兆が・・・

今シーズンの北アルプスは例年になく雪が多かったとか。
京都での蝶の少なさに嫌気がさしたことも手伝い、夏の下見がてら飛騨へ。
もちろんそれなりの副産物にも期待しつつ。
平湯トンネルを抜けると拝める笠ヶ岳はまだ真っ白だった。


平湯温泉からの姿が素敵な笠ヶ岳。(高山市)

奥へ入ると、季節はまだ初春で、コツバメの最盛期。
雪渓もびっしり残っており、まともに行動できない。
どうやら成果なく帰ることになりそうなことはすぐに分かった。


沢筋には入れなかった。(高山市)

もちろん白出沢などはまだ冬山装備でないと入れない状態らしい。
しかも、夏のオオイチモンジにとっても良くない材料が生じていた。
すっきりしない気分で林道を進むと・・・


雪で途絶している林道。(高山市)

山側からのデブリが林道を覆い、進路が消えていた。
雪を越えていくと、先の林道に出られるのだろうけれど、
変なところで滑ると川に落ちてしまいかねない。
今回の下見は気分的にもここで終了とした。


虚しく初夏は過ぎ去り

招かれざる客が・・・

ヒョウモン類の大不作に象徴される物寂しい初夏。
どこに出かけてもろくに蝶は飛んでおらず、不景気な風景ばかり。
藪に潜むオオヒカゲを数頭見ただけという日もあった。


オオヒカゲも他の生息地では少なかったようだ。(木津川市)

7月入り、クロヒカゲモドキ探索の時期となり、決定的なことが起こった。
ヤマビル襲来である。
今まで数十年間、山城地域でヤマビルにやられたのは2回だけであった。
それも各1匹ずつ。だから、いないわけではないことはわかっている。
雨上がりの獣道のような、よほど気持ち悪い場所に入っていかない限り、
山城地域でヤマビルを意識する必要はなかった。
ところが、数頭が長靴を這い上がり、数頭が長靴の中にまで侵入して来る事態となった。
クロヒカゲモドキやオオヒカゲを求めて何回も入っている場所で。
小雨の中の探索でも今まで姿さえ見たことがなかったのに・・・。
この日は、クロヒカゲモドキ未発見のまま、完全にやる気を喪失した。
馴染み深いあの場所に入っていくのにも躊躇せざるを得なくなるとは。


今シーズンはどこへ行っても今ひとつ

こんなに蝶が少ないなんて・・・

2017年の特徴は2つ。
1つは、蝶の羽化が5〜10日程度遅れていたこと。
これは春先だけでなく夏まで続いたように思う。
もう1つは、蝶の個体数が非常に少なかったこと。
ミスジチョウのようにそれなりに見られたものもあったが、
普通の年ならイチモンジチョウやヒオドシチョウなど
多くの蝶で賑わっているウツギの花も、ただ虚しく咲いているだけだった。


ミスジチョウはいつものように吸水に降りてきていた。(和束町)

ヒョウモン類も少なく、まともに姿を見ないままに6月が過ぎてしまった。
特に、クモガタヒョウモンは1頭も出会うことがなかったし、
メスグロヒョウモンで賑わうはずのオカトラノオの丘も閑散としていた。


6月4日のこのような花場に何もいないことは異常。(宇治田原町)

こうまで酷いと気持ちが萎えてくるのだか、その後さらに追い打ちをかける要因が・・・。


ピークハント?

新天地を求めて・・・

ミヤマカラスアゲハの時期には、行ったことのない山頂を目指して何度も出かけた。
その一つが三上山(さんじょうさん)である。
木津川市の最高峰とあれば、ミヤマカラスアゲハなどが続々と来るのでは、と期待して・・・。


加茂町の木津川岸から三上山を望む。(木津川市)
この山への登り方として、JR棚倉駅からのコースや山城森林公園からのコースが
ガイドブックに紹介されているが、山頂に至るのは意外にしんどい。
実際にはもっと楽な登り方もあるのだが・・・。


この標高でも木津川市の最高峰。(木津川市)

山頂には休憩所を兼ねた立派な展望台が設置されている。
そのためもあって、山頂部は蝶を追って走り回れるほどには広くない。


立派な展望施設。下にはベンチがありゆっくり休める。(木津川市)

蝶の方は、キアゲハやアオスジアゲハは常時占有飛翔しており、
ミヤマカラスアゲハ、カラスアゲハ、クロアゲハなどが時々やってくる。
ミヤマカラスの個体数は少なく、展望台が邪魔になるため採りにくい。
他にはアオバセセリも1頭だけ飛んでいた。
以上のように、少ないながら蝶はいることはいるが、ハイカーも多い。
展望台の下の休憩所を団体さんに占拠されでもしたら、採集はやりにくいだろう。
快適に過ごせるかどうかは他のハイカーの動向次第というところか。


展望台に上がると山城地域が360°一望できる。(木津川市)


活動低調なシーズンを終えて

今頃になって・・・

今シーズンは、ここ数年のうちでも際立って活動が低調だったうえに、
ネット環境の不調も重なって拙サイトも放置状態になっていた。
ほとんど活動していないため内容は乏しいが、
遅ればせながら備忘録の意味でぼちぼち更新していきたい。