2018年 山城メモ蝶


現在、クロヒカゲモドキのベストシーズンのはずですが、
西日本は大雨続きで、京都でも特別警報が出たりで、探索どころの状況ではありません。
しかも、昨年からクロヒカゲモドキの生息地はヤマビルが多発しており、
今年のこの雨続きでは、一層ヤマビルが勢いを増しているに違いありません。
そんなわけで、今シーズンはクロヒカゲモドキの探索を断念することになりそうです。
このあたりで、4月以来溜まっていた「メモ蝶」を遅ればせながらまとめて掲載します。


3町村目のクモガタヒョウモン

ようやく果たした宿願・・・

山城地域でクモガタヒョウモンが確実に生息しているのは、
宇治田原町、和束町、南山城村の3町村である。
このうち南山城村は秋季に雄を確認しているものの羽化期には未調査であった。
どうしても成果の上がりやすい和束町での探索を優先してしまっていたのが原因。
この日は、幸い?和束町での探索が不調で、それならばと、
以前から気になっていた南山城村童仙房に上がってみた。
幸いウツギは満開で条件は良い。
クモガタが来るならここ、と目星をつけていた場所に行ってみると、
予想通りいい感じのウツギがあったので、そばに車を停めて腰を落ち着けた。
しかし、何もいない。周辺のアザミにウラギンヒョウモンが来るだけ。
ウツギの周辺はなぜか閑散としている。
とうとう12時を過ぎてしまい、失意の昼食タイム。
諦め半分でおにぎりを頬張りながら車のそばのウツギを眺めていると・・・
向こう側の込み入った位置で羽を開閉させて吸蜜しているヒョウモンを発見。
いつから来ていたのか?もちろんクモガタヒョウモンで、新鮮な雄。


クモガタヒョウモンの来ていたウツギ。(南山城村童仙房)

なかなかネットを振れる位置で吸蜜してくれず、一度は飛び去ってしまった。
しかし、本種は気に入ったウツギには戻ってくることが多いと感じていたので、
しばらくその場を離れて再び見に行くと、やはりまた来ていた。
手こずったが、ようやく南山城村産の新鮮なクモガタヒョウモンを手にすることが出来た。


得難い童仙房のクモガタヒョウモン。(南山城村)


黒いホシミスジを追って

意外な出会いも・・・

紀伊半島のホシミスジは近年山城地域に生息するようになった
素性の知れない白っぽい個体群とは別物、別格の存在である。
以前、十津川村に越冬幼虫を探しに行ったことがあったが、
食樹は多いものの、敗退してしまったことがある。
今回は目先を変えて、成虫を目当てに場所も変えて出かけた。
googleMAPで検討し、人の来そうにない場所へ二日間通った。
いわゆる鹿害のためかイワガサは少ない。過去には多かったであろう痕跡が残るのみ。
風前の灯火とはこのことか。


岩の脇にわずかに芽生えている矮小なイワガサ。(奈良県)

イワガサはちょうど花期のようで、見事に花を咲かせている木がわずかにあった。
到着してすぐに、この花をつけているイワガサのそばを飛ぶホシミスジが目に入った。
他所で見るイメージと違い、黒っぽく小さく、飛び方が妙に素早い。
近づく間もなく飛び去ってしまった。
イワガサの周辺で緩やかに舞ってくれるなどということはなく、
このあたりは単にちょっと立ち寄る通過点のようで、落ち着きがない。
初日は、曇っていたせいもあるのか、数回姿を見ただけでまともにネットを振るチャンスすらなく終わった。


満開のイワガサ。(奈良県)

二日目は好天に恵まれた。しかし、相変わらず飛来頻度は少なく、近づく機会も少ない。
足場が悪く、自由に動き回ることができないのがもどかしい。
ここで人の声がしたと思ったら、親子連れの採集者の姿が。
最初は分からなかったが、何と蝶研同期のK君であった。
20年振りくらいの再会になる。一気に時間、年齢が逆戻りした感覚のひとときだった。
そしてこの場所の持つ意味も理解できたつもりである。
その後、ホシミスジはそれぞれ何とか1頭ずつ捕獲することが出来た。


紀伊半島の岩場に棲むホシミスジ。(奈良県)

実際採ってみると、やはり、小型で黒っぽく、独特のものだ。
今回は、ホシミスジも良かったが、K君に会えたことが最大の収穫だった。


低調なGW

場所により季節感がちぐはぐで・・・

山頂のミヤマカラスアゲハの盛期が早々に過ぎてしまったので、
花に来る雌を目当てに谷間を訪れた。
ところが、モチツツジは一輪しか開花していないし、
オナガアゲハもまだ出ていない様子。
何も飛ばない静まりかえった谷間に長居は無用だった。


イヌビワ幼木にいたイシガケチョウの幼虫。(木津川市)

帰途立ち寄った木津川市で、藪の中に30cmほどの小さなイヌビワがあり、
こんな木にも数頭のイシガケチョウの幼虫がいた。
持ち帰ってみると、例によって数日のうちに終齢、そして蛹になってしまった。
自然状態ではもう少しゆっくり成長するのだろうか。


一面ミヤコグサの光景。(木津川市)

念のため、ミヤコグサの多い場所をチェック。
いつものことだが、モンキチョウがわずかに飛んでいるだけだった。
こんな感じで今年のGWはろくに蝶を見ないで終わってしまった。


GW前に既に初夏

異例に早い季節進行に戸惑いつつ・・・

桜は3月中に見頃、木々の芽吹きも早く、ギフチョウも4月半ばで最盛期過ぎ。
この感じだとミヤマカラスアゲハも十分飛んでいるだろうと出かけてみた。
先に来ておられたOさんによると、すでに羽が痛んでいるものが多いとか。
ただ、先週はまだいなかったようなので、このところの陽気で一気に羽化した様子。
Oさんのお嬢さんの採集しているところを拝見していると、
酷く破損した個体から新鮮な個体までが入り交じっていた。
ここは他にも採集者がおられ、すっかりメジャーな場所になってしまった。
午後は別の場所に移動。


春霞の京都南部を一望。(木津川市)

こちらも抜群の眺望で気持ちが良い場所。
到着した途端、願望通りツツジにミヤマカラスアゲハが来ていた。
夕方までゆっくり過ごして、少なくとも大破した1頭を含む7頭を確認した。


カラスアゲハやクロアゲハは見かけなかった。(木津川市)

不思議なことにカラスアゲハとクロアゲハは見られず、
黒いアゲハはすべてミヤマカラスアゲハであった。
午後遅くになると、急に越冬後のアカタテハの個体数が増したのは興味深かった。
また、この日はアオバセセリは見かけなかった。
締めくくりに、ナナフシの幼虫を採集しながら下山した。