【茂木 健一郎氏】

テレビの「プロフェッショナル」で司会をしているので知っているが、今回、仏法者・池田先生
との往復書簡による対話が中央公論誌上で行われた。
茂木氏の経歴をみて正直驚いた。1962年生まれ、東大理学部・同法学部卒、同大・理学系研究科
物理学専攻課程を修了し、理学博士となった人で、その理学・物理学者と「科学と宗教」につい
ての対話である。

少なくとも相容れない「壁」が存在すると思われるなかで、お互いが、お互いの主張を理解し「
壁」と思われる違いを、納得の上で知識を高め、深めあっていかれる「この対話」は素晴らしく
、自分の周りに居る「知ったかぶり」をし、我々を馬鹿にする浅はかな者たちや、信仰を持つ者
は、弱い者のすることだと、平気で信心する人を馬鹿にする者とは、天地雲泥の差がある。

特に、いくつもの納得した中で、法華経の 「二処三会の展開と、現実生活」への指針である。
法華経二十八品の第一から第十まで、釈尊は、インドに実在する「霊鷲山」で法を説く。
それが第十一から第二十二では「虚空」で法を説く。ここでは地球大のスケールの荘厳な宝の塔
が出現し、釈尊とともに一座の衆生も虚空へと連なる。おとぎ話のような物語の展開は、不可思
議な人間生命の大きさとダイナミズムを表現していると言える。
釈迦は、生命の浄化と現実生活への生き方・振る舞いを、二箇所での説法と三度の往復を経とい
う形で書き残している。例えば学校を「虚空会」として、現実生活の場を「霊鷲山会」と捉えること
ができると思う。ただ今の仏教は形骸化し、現代人をリードしていけるようなものでは、なくな
ってしまって、何の納得も感動も得られなくなってしまっている。
しかし、さすが脳科学者の茂木博士である。この教えを「納得」をもって理解された。

大地は、いうなれば、生老病死の苦悩が渦巻く現実世界であり、娑婆世界である。そして虚空と
は、仏の生命の広大無限の境涯で、時間や空間の制約を超えた、永遠にして自在無碍の生命力が
満ちあふれた生命へと一挙に上昇する。そして第二十三から終わりまでは、また「霊鷲山」に戻
り、師の教えを受けて、自らの尊い生命に目覚め、崇高な使命を担って、再び悩みの絶えない現
実生活で、人々のために行動していくことが説かれている。と、脳科学者である、茂木健一郎氏
に、池田先生が説明されていることである。そして、茂木氏の「人間の自由闊達な精神」とも、
深く共鳴する。

単に、荘厳な生命の展開を抽象的に説いているのではなく、あくまで「現実生活」と「信仰活動
」への、行動への展開であった。法座である座談会や御書学習会に参加しての「学会活動」の中
で、己が生命を磨き高め、清らかな生命で、使命に燃えた強い生命力で「現実生活」に戻り、菩
薩道を歩んでいく。
ここに、何のための学会活動か、そして、娑婆世界である現実生活に、如何に生きていくべきか
が、明確に説かれていることが良く解かる。

そして学会活動は「自行」であり、娑婆世界での行動は、広宣流布の使命に燃えた菩薩の行動に
起こる仏界の生命であり「化他」である。決して現実生活と学会活動は別々ではなく、「御本尊
に向かい唱題し、御書を学ぶ虚空会」と、「現実生活の中で、四悉壇をもって使命に生きる霊鷲
山会」との往復である。
いま改めて考えると、自分は日々忙しく、また会合渡り鳥みたいに、また日程消化形の学会活動
ではなかったか。
翻って周りをみると、信心は信心、学会活動は学会活動。生活は、仕事は、隣近所との付き合い
は付き合いで、それぞれ、信心には関係ないと思っている人が本当に多い。
だから、座談会で「体験発表」と言われると、この一ヶ月間、無事に、しかも健康で生活してきた
ことや、嬉しかったことや、会社で頑張ってきたことで、精一杯生きてきたがあっても、新聞推
進、折伏などが出来ていないと恥ずかしいと考える人の多いこと。
これでは、御本尊に功徳がないと言っているのと同じで、これこそ謗法である。

ともかく、何度も御書から、先生から「振る舞い」の大切さを学んできた。しかもその振る舞い
は、学会活動をしている時だけのものではなく、それは、四条金吾に与えられた諸御書にも明確
である。
例えば、「中務三郎左衛門尉は主の御ためにも、世間の心ねもよかりけりよかりけりと、鎌倉中
の人人の口にうたわれ給え」と。また「八万四千の法蔵は、我が身一人の日記文書なり。」云々
と。
結局は、釈尊にしろ日蓮大聖人にしても、信心の目的は「自己の生命を磨き、人々に尽くす人生
」(菩薩道)にあると訴えられていると思う。

所詮、世間は「ギブ・アンド・テイク」である。尽くすこともしないで、一方的に相手から「テ
イク(利用する)」ばかりでは、日々「慈悲」の行動を学んでいることとは、矛盾するのも甚だし
い。
これより、さらに信心に励み、地域に信頼され、尊敬される人材として成長し、慈悲の行動をも
って、徹底して「ギブ(人に尽くすこと)」をして行けるよう頑張って参りたい。
そうすれば、必ず周りから「テイク(報い)」がもたらされるだろうと確信する。