<第九話>
はらせぬ恨みをはらします 許せぬ人でなしを消します
いずれも人知れず仕掛けて仕損じなし 人呼んで仕掛人
ただしこの稼業 江戸職業づくしには載っていない
のさばる悪を何とする 天の裁きは待ってはおれぬ
この世の正義もあてにはならぬ 闇に裁いて仕置する 南無阿弥陀仏
<必殺仕置人 エンディングナレーション>
仕置。法によって処刑することを江戸時代、こう呼んだ。
しかし、ここに言う仕置人とは、法の網をくぐってはびこる悪を裁く闇の処刑人のことである。
ただし、この存在を証明する記録・古文書の類は一切残っていない。
どこかで誰かが泣いている 誰が助けてくれようか この世は人情紙風船
耳をすませたやつは誰 泣き声目指して走る影 この世は闇の 助け人
<エンディングナレーション>
助け人の存在を証明する記録は 何も現存していない
ただ 江戸の庶民達は彼らを義賊という名で
あるいは世直しという名で 密かに語り続けた
伝えられる闇の助け人の総数 二十六人
黒船このかた泣きの涙に捨て処なく 江戸は均しく針地獄の様呈し居り候
尽きせぬこの世の怨み一切 如何様なりとも始末の儀 請け負い申し万に一つもしくじり有るまじく候
但し右の条々 闇の稼業の定め書き 口外法度の仕留人
金に生きるは下品に過ぎる 恋に生きるは切なすぎ 出世に生きるはくたびれる
とかくこの世は一天地六 命ぎりぎり勝負を賭ける
仕事はよろず引き受けましょう 大小遠近男女は問わず 委細面談仕事屋稼業
◆次回予告
次回、必殺必中仕事屋稼業。続いて、入ります。
一筆啓上 火の用心 こんち日柄もよいようで あなたのお命もらいます
人のお命いただくからは いずれ私も地獄道
右手に刃を握っていても にわか仕込みの南無阿弥陀仏
まずはこれまで あらあらかしこ
あんた、この世をどう思う? どうって事ねえか。あんたそれでも生きてんの?
この世の川を見てごらんな。石が流れて木の葉が沈む、いけねぇな。
おもしろいかい? あんた死んだふりはよそうぜ。
やっぱり木の葉はピラピラ流れてほしぃんだよ。石ころはジョボンと沈んでもらいてぇんだよ。
おいあんた聞いてんの? 聞いてんのかよ。
あら、もう死んでやがら。ハー(声ではなく吐息)、菜っ葉ばかり喰ってやがったからな。
雨が降ったら傘をさす (声:山田五十鈴)
辛い話は胸をさす (声:芦屋雁之助)
娘十八、紅をさす (声:ジュディ・オング)
魔がさす、棹さす、将棋さす (声:森田健作)
世間の人は指をさす (声:緒形拳)
許せぬ悪に (声:山田五十鈴)
とどめ刺す (声:緒形拳)
さよならだけが人生か それなら今日(こんち)はなんなのさ
昨日勤皇 今日佐幕 昨日ほんとで今日は嘘
雨は振る振る 血の雨が 人の情けは泥まみれ 明日天気になぁれ
人の一生は 旅に似てると言いますが本当にそうでございますね
私 安藤広重が 旅をえがきました東海道五十三次
きれいばかりで少しも人のため息が聞こえてこないとか そんなことはございません
一枚一枚に切羽詰った恨みとつらみ つまりは殺してもらいたい人間を そっと描きこんである仕掛け
お艶さん よっくご覧の上 東海道五十三次殺し旅 よろしくお願いいたします
春には春の花が咲き 秋には秋の花が咲く
わたしの花は何の色 咲くならそっとスミレ色
目立たぬように咲きましょう 目立てば誰かが手折ります 手折られ花は怨み花
涙色した風下さい 涙色した水下さい
神や仏がいなさって 悪を罰して下さると 小さいときに聞きました
それはやさしい慰めと 大きくなって知りました
やさしさ頼りに生きてはきたが やさしさだけでは生きては行けぬ
早く来てくれ からくり人
二つの眼を閉じてはならぬ この世のものとも思われぬ この世の出来事見るがいい
神の怒りか仏の慈悲か 恨みが呼んだか摩訶不思議 泣き顔見捨てておかりょうか
一太刀浴びせて一供養 二太刀浴びせて二供養 合点承知の必殺供養
<エンディングナレーション>
超自然現象。それを証明する多くの伝承が、古来より東西に渡って受け継がれている。
この一行は、これからもこのような未知の世界への旅を続けるであろう。
例え、あなたが信じようと信じまいと。
一掛け二掛け三掛けて 仕掛けて殺して日が暮れて
橋の欄干腰下ろし 遥か向こうを眺むれば この世はつらい事ばかり
片手に線香 花を持ち おっさん おっさん何処行くの
私は必殺仕事人・中村主水と申します
「それで今日は、何処のどいつを殺ってくれと仰るんで?」
箱根八里は(ここまで歌風の言い方)馬でも越すが 越すに越されぬこの世の峠
西が曇れば涙雨 東が曇れば恨み雨
どうせこの世は生き地獄 替わってはらそう女の涙 この世の苦しみ仕舞人
世の中は行くな戻るな居座るな 寝るな起きるな立つな座るな
生麦生米生卵 どじょうニョロニョロ三ニョロニョロ 合わせてニョロニョロ六ニョロニョロ
尻尾押さえりゃ頭が逃げる 頭押さえりゃ尻尾がはねる
とかくこの世は悪党ぞろい 悪人ヒョコヒョコ三ヒョコヒョコ 四ヒョコ五ヒョコ六ヒョコ七ヒョコ八ヒョコ九ヒョコ十ヒョコ
ええい面倒くせい 殺っちまえ!
今の世の中、男は女の力に負けそうです。
しかし昔、女は弱かった。破れ傷つき泣いていた。そんな時代の出来事です。
女の涙に映った怨みを晴らして歩く仕舞人一座の物語!
それでは開幕の拍子木を鳴らしましょう。お命! ご用心。
世の中の 善と悪とを比ぶれば 恥ずかしながら悪が勝つ 神も仏も無えものか
浜の真砂は尽きるとも 尽きぬ恨みの数々をはらす仕事の裏稼業
へへっ お釈迦様でも気が付くめぇ
◆次回予告
時代劇は、必殺です。
昔から悪の栄えたためしはないと 世の例えには言うけれど どうやらそうではないらしい
山のあなたの国々も 悪が栄えていると言う
わからない事ばかりだが わかっている事ただ一つ 許せぬ悪を消す事だ
この世とあの世の境の場所に 舟を浮かべて待っている 三途の川の渡し人
近頃世間に流行るもの 押し込み強盗 高利貸 賄賂をもらう偉ぇ人
金、金、金の世の中で 泣くのは弱い者ばかり
涙を拭いておいでなせぇ 恨みを晴らす仕事人 陰膳据えて待っておりやす
◆次回予告
時代劇は、必殺です。
花が咲いても 人は泣き その泣き声は蝉時雨
月は晴れても 心は闇で 逃げてさ迷う 雪の中
一年三百六十五日 鴉の泣かぬ 日はあれど 悪人笑わぬ 日とてない
恨みを断ち切る 仕切人 浮世の気晴らし なすってくだせえ
お医者様でも草津の湯でも 恋の病は治らねぇ
恋の闇よりなお暗い 恨みの夜の稲妻に 姿が浮かぶ仕事人
顔は見ねぇでおくんなせぇ 心の闇を 晴らして見せやす
◆次回予告
時代劇は、必殺です。
十月十日に生を受け 七五三なら祝い事 もめ事 泣き事 勝負事
さらに加えて 弔い事 裏切り 騙され 棄てられる
疲れ果てたら おいでなせえ この世とあの世の橋掛けに そーっと送って さしあげやしょう
寂しさに宿を立ちいで眺むれば 空に真っ赤な雲の色 この世は真っ赤な嘘ばかり
嘘と悪とで押しつぶされた お前に代わって悪人どもを 真っ赤な血潮で染め上げましょう
仕事が済んだその上は これやこの行くも帰るも別れては 知るも知らぬもお前と私 仕事人の掟でござんす
◆次回予告
時代劇は、必殺です。
天に二つの陽がないように 闇の世界も二つはいらぬ
江戸の二つの闇組織 どちらが勝つかサバイバル
まず かんざしの秀を消せ
暗闇指令の飛ぶ中を 秀 麻呂 東吉 桂馬のお銀 悪に向かってまっしぐら
雪に白鷺 闇夜に鴉 紛れ隠れる悪い奴
正直者は阿呆鳥 これじゃ理屈が合いません
世の中こんなもんだよと 諦めないで来て下せい
どこに居ようと探し出し 必ず仕留めてご覧に入れやす
◆次回予告
<旋風編> 次回も必殺仕事人、よろしく。
(声:菅原昌子)
<風雲竜虎編> 必殺仕事人、頑張ります。
(声:三浦友和 八話のみ:村上弘明)
あの町この町陽が暮れて 世の中闇に沈む時 昼間隠れたお化けども 大きな顔で歩き出す
金、金、金の亡者たち 土地を喰ってる赤鬼や 権力ほしい青い鬼 どこかの国に似ています
あまりと言えばあんまりな 百鬼夜行の鬼どもをバッタバッタと斬り倒す ゲゲゲの鬼太郎 桃太郎
今度の必殺剣劇人 大人のお伽話です
月は東に 日は西に 山のお寺の鐘が鳴る
あの町この町日が暮れて 今来たこの道 夜の底
悪人どもの目が光る 上下左右に前後ろ
次から次とあきれるほどに 浮かんで消える 毒の華
サルカニ合戦桃太郎 勧善懲悪 夢物語
あきらめるのはおよしなさい この世に悪がある限り あなたのそばに仕事人
きっと 恨みを晴らしてみせます
金は天下(てんが)の回り物
ところがどっこい近頃は 天下が金の回し者
金さえありゃとは申しませんが 情けがありゃとも申せません
きれいごとばかりじゃー とどのつまりの堂々巡り
どうやらどの世に生まれても こいつだけは許せねえ てな輩がおりますもので
あの世の地獄と この世の地獄 どちらも地獄にかわりなし
(おやおや) どっかで誰かが泣いてるかい そうかいそうかい そういうあんたにゃ他人事か
云わぬが花とは申されど ひとこと云わせていただきます
あんたが見るか おいらが見るか 誰かが地獄を見なけりゃ終われねえ
善男善女にゃ無縁の話で御座います