時雨「皆さん、ネコはご存知ですよね? 敏感に動くかわいいお耳。感情豊かに揺れるしっぽ。そして、二本足で歩くとっても素敵な生きもの。そんなネコがお好きなら、こちらのパティスリーに、是非いらしてみてください。とびきりキュートなネコ達が、あなたをお待ちしています」
ショコラ・バニラ・アズキ・メイプル・シナモン・ココナツ「いらっしゃいませ! ラ・ソレイユへようこそ!」
俺はマーチン・カズンスキー
みんなカズっていう
職業は弁護士
でもエリートじゃねえぜ?
車を盗んで8年もムショにいた、ムショ帰りの弁護士よ
一度罪を犯すと世間様は冷たいねぇ
心底悪いと思って出直そうったって素直に受け入れてくれやしねえ
口幅ったいようだが、落ちこぼれモンでなきゃ人間の本当の弱さ、悲しさ、それに心の痛みなんかわかりゃしねえ
だから俺はそんな奴らの助けになりたいって、ムショでがむしゃらに勉強して、弁護士の資格を取ったのよ
法の目をくぐり、ぶくぶく太る連中、ちから笠に着て弱い者いじめする奴ら
やだねえ、でえっ嫌えだ
断じて許せねえ
俺がカタぁつけてやるぜ
<第一、六話>
眠狂四郎。もちろん本名ではない。転びバテレンが神を捨て悪魔を信奉する、誓いの黒ミサの儀式の生け贄となって、母が自らの命を絶ってから十三年の歳月が流れ去っていた。
<第二〜五、七、九話>
眠狂四郎。もちろん本名ではない。転びバテレンが女を犯して設けさせた宿命の子であった。その母が、黒ミサの儀式の生け贄となって自らその命を絶ってから十三年の歳月が流れ去っていた。
徳川の威信が凋落の兆しを見せ始めた将軍家慶の頃、外様大名薩摩藩を中心に、西国十三藩が不穏の動きを見せ始めた。
時の老中水野忠邦の命を受けた武部仙十郎は、この謀議壊滅を急いだ。
何故か江戸を後に西へ向かう無頼の徒、眼狂四郎は知らず知らずのうちに、その渦中に巻き込まれていた。
「眼狂四郎と覚えておいていただこう」