**ただ、話のタネだけに(ネス湖旅行記)**

仕事で英国に出張した際(当時はオランダの事務所に駐在していた)ニュ−カッスルに住んでいた
Tさん(彼も当時は独身だった)宅に宿泊させてもらったのだが、週末が重なった事もあり、
ネス湖へ遊びに行こう!という事になった。
とりあえず、土曜日に一泊し、日曜日の夕刻に帰る計画で、Tさんの愛車180SXでいざ出発。


地図を見ながら私がナビゲ−タ−をする。取り敢えず北へ、北へとすすむ。知らない所を
ドライブをする楽しみの一つに、知らない風景を眺める事がある。
英国には、高い山がないが、この当り(北イングランド、スコットランド)も例外ではなく、
丘が続くばかりで風景に変化がない。最初は低い草が生い茂っている丘の風景に、はっ!と
させられたが、(木々で覆われた高い山々が続く日本の風景と趣が違っている)ずっと、同じ
風景が続くといいかげんうんざりして来る。(同じような体験は、過去にもあった。南スペイン、
アンダルシア地方のひまわり畑である。この風景も最初は見たことが無く、以前から是非見たいと
思ってた風景だったので、その整然と並んだ無数のひまわり群に驚いたのであったが、それは
最初だけで、あまりにも長く続くので、いいかげんうんざりしてしまった。)

1時間程、走った頃、道沿いに大きな石で出来ている碑がある。 見ると片方には、“ENGLAND”, 
もう一方には、”SCOTLAND“と記されている。つまり、ここは、ENGLANDとSCOTLANDの
国境(正確には州OR地方の境というべきか?)なのだ。 我々日本人は島国に住んでいる事から、
国境という概念が無い。ましてや、同じイギリスではないか! イギリスは、United Kingdomと
言い、つまり、“連合王国“って事である。イングランド、ウエ−ルズ、スコットランド、北アイル
ランドが一緒になったのが、日本で言う“大英帝国“であり、イギリス=イングランドではない。 
ただ、単純にイングランドが大英帝国のリ−ダ−的な存在であるにすぎない。(これは、オランダ
にも当てはまる。オランダの本当の名称は、“The Netherlands“という。つまり、低い土地を
意味し、海を埋め立てて領土を広げてきた。 オランダ人は、“世界は神が創ったが、わが国は、
オランダ人自身が作った。“と誇らしげに言う。英語でのホ−ランド(Holland)は、
アムステルダムを中心とした、ホラント州が中心となっており、これがイコ−ル国名と取り違え
られるようになった。)もともと別の国であった事から、地域意識が非常に高い。(例えば、
イギリスの通貨はポンドであるがイングランドの紙幣とスコットランドのそれとは、違っている。
イングランドのはエリザベス女王が描かれているが、スコットランド紙幣には、見知らぬ人物
(私が知らないだけで、スコットランド所縁の有名人なのであろう。)が描かれている。
大きさも違う。(英国駐在の人から聞いたことであるが、欧州の他の国へ出張した際、両替しよう
スコットランド紙幣を出したら、拒否されたとの事である)
ここら辺りが、実に理解しづらい。異人種、或いは、宗教の違いから争いがあるのであって、
同じ人種間で争いはあったとしても、憎みあう事はないようだ。 イングランドとスコットランド
共、人種は同じアングロサクソンである。
ただし、ウエ−ルズは、アングロサクソンではなく、ケルト民族が祖先である。従って、言葉は、
英語とは全くかけ離れている。普通、欧州では、近辺の諸国同士、言葉は似通っている。
彼らからすれば方言みたいなものであり、複数の言葉を話すのは当たり前だ。 ラテン系を考えれば
一目瞭然。(フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語それとル−マニア語もラテン語が
語源となっている。これらの言葉は、本当に似ているので、彼等には他のラテン系の言葉をマスタ−
するには苦労はいらない。)しかし、このウエ−ルズ語は、英語とは全くかけ離れたものである。
(当地では、公用語は英語であり、ウエ−ルズ語を話す機会が少なくなっているそうだ。)

我々の車は北へと進む。エジンバラを過ぎて、フォ−ス湾に掛かる橋を渡る。更に北上して行くと、
“St. Andrews”という標識が見えた。 えっ!ひょっとしてゴルフの聖地のセントアンドリュ−ス
の事? ちょっと、寄ろうか。と、Tさんと相談したが、今回は時間がないので、諦める事とした。 

インバ−ネス市は、ネス湖の入り口である。ここから湖の北側の岸に沿って車を走られる事にした。
どうも、ネス湖は、海と繋がっているようだ。 この湖は東西に細長く、カレドニアン運河と
繋がって、スコットランドの東西を貫く輸送手段として役立っているようだ。

さて、湖に沿って走っていくが、驚くべきかな、水が真っ黒だ。 透明度という言葉は、この湖には
無用のものに思われる。 途中に滝の看板があったので、行ってみるが、この滝の水からして
黒い。恐らく土壌のせいかと思われるが、“美しい”というイメ−ジからは、かけ離れている。
途中、お土産やさんがあってので覗くことにした。 店の奥には、やっぱりというかネッシ−の
複製(?)がど〜んと置かれている。 まあ、ここではこれしか“売り物”は無いから仕方が無い。

(ネッシ−?とツ-ショット)
日も暮れて、今夜の寝所を捜す事にした。
英国には、B&Bという民宿のようなものがある。
B&Bとは、つまり、BED & BREAKFASTの意味で
あり、民家を旅行客にベッドと朝ご飯を
提供してくれる宿泊施設である。湖の終点
(といっても水路とつながっているので終点と
いえるかどうか。。。)の辺りは、少し開かれて
いる所で、宿泊施設やレストランもある。ここで
B&Bに宿泊する事にした。 それにしても,
8月の末というのにこの寒さはいったいなんだ?
セ−タ−が必要な程で、日本でなら、秋から冬に
かけての感じである。 セ−タ−なんぞ用意して
いなかった哀れな東洋人二人は、B&Bで紹介して
もらったレストランへ小雨が降りしきる中を
震えながら駆け込んだのであった。
但し、ここで何を食べたのか全く思い出せない。
何故か?理由はいたって簡単明瞭である。
つまり、印象に残る食べ物を食べなかったからである。 イギリスの料理なんぞ食べられたものでは
ない。 一体、この国には、どんな名物料理があるというのだ。 ロ−ストビ−フ、フィッシュ&
チップスが名物料理なのだそうだが、英国南端のプリムスの高級ホテルで食べたロ−ストビ−フ
なんぞさっぱり美味しいと感じなかった。 一応デミグラスソ−スのようなものは、かかっている
のだが、色だけで、味が全然ないのである。何の為にソ−スがあるのだ!と、ぼやきの一つでも
出てくる。
更に、Fish & Chips。これは鱈のフライにポテトチップを添えたもので、このフライが、また、
油がぎとぎとで、とても最後まで食べられない。よくこんなものを食べて胸焼けがしないものだ。
しかし、まあ、この国の食文化に乏しい事ったら、一体。。。(これはオランダにも当てはまる事
だけれど)

翌朝、ここのB&Bに飼われているポニ−(子馬)が、オスだと判った。 う〜ん。でかい!
地面につきそうだ。馬も人間と同じで、朝方になると、同じ現象が現れるのだと理解したので
あった。
軽い朝食を取って、ニュ−キャッスルへ戻る。 今度は、湖の南側の岸を通り、インバ−ネス市から
来たときと同じ道を通り、再度、国境(?)を経由して無事に生還。


翌日、イギリス人従業員にネス湖へ行った事を伝えると、おもっきり馬鹿にされてしまった。
確かに、その通りである。湖の水は汚いし、夏でも寒いし、観光地とは全くかけ離れているので
ある。
「あのような所へ何をしにいったのだ?」と言いたかったのであろう。「確かに言われても仕方が
無いなあ。」と、言うのが正直な所だったから、何ら反論できない。これで、ネッシ−にでも遭遇
していたら話は別で、一躍有名人になったのであったのだが。。。でも、もう2度と行くもんか!
まあ、話の種に。。。とでもしておこう。

(あとがき)
最近、ネッシ−の存在が否定された。 実は、存在を裏付ける写真を撮った人物が、どのようにして
その写真を撮ったのか暴露したのである。 詳細は忘れてしまったが、「恐竜をかたどった物体を
湖に浮かべて撮った。」との事であった。 これじゃあ夢もロマンもあったものではない。 
あそこには少ないとはいえ、私のような物好きの人間が訪れ、このことで、付近の住民は観光収入
として潤うのである。こんなことしては、付近の住民に対して経済的にダメ−ジを与えることに
なってしまう。
できれば、暴露して欲しくなかった。世の中には、UFOや心霊現象といった不思議な現象、未知なる
ものがあった方が楽しい。 ロマンがあって良いじゃないか!と、思う。ネス湖もそんな存在で
あって欲しかったのである。






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