3.テレビの影響力
1月15日(金)
最近テレビを見るとすれば、撮り溜めた旅番組、アウトドア系番組、温泉系、いきもの、特に鳥系などがほとんどだ。
リアルタイムで見るとすれば、報道・情報番組ぐらいかな、バラエティ番組は何を言っているのかわからなくなるし、ちっとも面白くない。ドラマ系は、ストーリーが追えなくなっている。
先日、たまたま『マツコの知らない世界』がついており、マツコがケンタッキーフライドチキンを美味しそうに食べていた。さらに、コンビニ系のフライドチキンも、たくさん、美味しそうに食べていた。
昨日はカバのお弁当がない日だった。
朝、出勤途中、ローソンでタバコを買ったのだが、レジで「黄金チキン スパイス香るもも」が目に入った。
これを買って、昼に食べたのが始まりだった。
・・・・
帰り道、今日はカバが夜遅くなる日、1、2品つまみ系か鍋・汁系を作っておいてくれる。まあ、近鉄特急でビール!はいつものことだが、今日はファミチキも奢っちゃおう、と、近鉄難波駅のFamily
Martで「淡麗グリーンラベル」350mlを2缶片手に取り、レジに向かうと、ファミチキの横に並ぶ「ファミマプレミアムチキン(サイ)」が目に入ったのだった。
鶴橋に着く頃には、1本目の淡麗とともに「ファミマプレミアムチキン(サイ)」はわたしの胃の中に収まった。
近鉄学園前駅北口にはケンタッキーフライドチキンがある。
わたしは、普段は駅構内の階段で赤膚山行きのバス停のある南口に回る。しかし、この日は、当然、北口を出た。
わたしは、改札を出るとすぐ左手にあるミスタドーナツには目もくれず、道向にあるケンタッキーフライドチキンへと急いだのだ。
店内の席に着く客は少なかった。ただ、なんと運が悪いことか、わたしの前には、テイクアウトの注文品の出来上がりを待つ客が2組、もたもた注文しているご婦人が1人…
昼ならいざ知らず、夕方、この時間にケンタッキーを買う人間など、そんなにいるはずはない、現に見よ、わたしが待たされている間、わたしの後には誰も来ないではないか!誰も並んでいないではないか!!なんと間の悪いことか…
わたしは少し苛立った。
「お待たせしました」と、やっとカウンターに呼ばれるまでの時間が、わたしには、何時間にも感じられた。実際は1分ほどであったかもしれない。
「部位は何種類ありますか?」と堰を切ったようにわたしは早口で尋ねた。
一瞬わたしの質問の意図をはかりかねていた店員ではあったが、すぐに理解したのか、後ろを振り向き、そこに並ぶチキンの群れを数え始めた。「自分の販売する商品の種類ぐらい覚えておけ」と心の中では叫んだが、そこは現代の基準では「初老」の年頃、じっとこらえて回答を待つ。
「5種類ございます」
「では、フライドチキン5ピース、そうすれば全種類食べることができますね」
ケンタッキー5ピースは〆て1,230円、店員はお金を受け取ると後ろを振り向き、少し小さめの声で、「5ピース1本ずつ全部入れてね」と言った。後ろに控えた箱詰め係は、これも小声で「はい」と答え、わたしのチキンを詰め始めた。
箱はわたしのチキンで一杯だった。それを受け取ったわたしは礼も言わず、急ぎ足で店を出たのである。
わたしは今度は駅構外の階段をわたしを待つバスの留まるバス停へと急いだ。わたしはかなり理性を失っていたのかもしれない。ただ、階段の手前、左手にある緑のFamily
Martの前、一瞬立ち止まり立ち寄る衝動が沸き起こったが、しかし、それを思い留まるだけの分別はあったようだ。
案の定バスはわたしを待っていた。発車するまでの数分、この時間がわたしには再び何時間にも感じられた。
バスは出発進行し、わたしの家へと向かった。
バスを降りいつもの道を文字通り小走りで走り終えたわたしは家に駆け込む。
普段であれば、服を脱ぎ着替えながらビール置き場に走り「金麦 糖質75%オフ」のプルトップを開け、ごくごくごくと一気に喉に流し込むのである。
しかし、昨夜のわたしは、それすら忘れていた。わたしは、居間の電気をつけ、テーブルに腰を落とし、目の前にケンタッキーの箱を置き、不器用に蓋を開け、皿も出さず、箱から直接わたしのチキンを取り出し、貪るように、立て続けに、わたしのチキンを2つ、文字通り、貪り喰ったのである。
そこでわたしは、やっと、一息つけたと感じた。
おそらく頬は緩み、目も細め、満足の笑みを浮かべていたと思う。
平静を取り戻したわたしはゆっくりと金麦を取りに向かった。そして、幸せを満身に感じながら、ビールで喉を潤したのである。
・・・・
一夜明けた今朝のわたしはすっかり落ち着きを取り戻していた。昨夜は遅く帰り、会うことがなかったカバが起きてきた。わたしは静かな口調でカバに言った。
「あ、おはよう。きみは昨夜は帰りが遅かったね、まあいい、昨夜はケンタッキーフライドチキンを買ってきたのだ、2個を晩飯として食した、きみが帰ってきたらふたりで分けて食そうと考えていた1個は一番大きなやつだ、部位の名前はわからない、それは今朝ふたりで分けて食べよう、あと1つは今日の弁当、きみのとわたしのに、分けて入れるがいい、すでに言ってあるがわたしは今夜は帰りが遅くなる、最後の1本ドラムはきみが今晩の夕食として食してかまわない」
カバは静かに
「かしこまりました」
と頭を下げた
・・・・
こいつぁー、春から、縁起がいい
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