黒部五郎岳
〜巨大なカールを持つ黒部五郎岳に登る〜
三俣蓮華岳頂上手前から見る黒部五郎岳

所在地  富山県大山町 登山口  太郎平小屋 下山口  双六小屋

標 高    2,840.0b 三角点 三等 形 態 通過
交 通  直通バス 同伴者 天 候 快晴

 黒部五郎岳は薬師岳とともに、北アルプス最奥に位置する名山。折立から太郎平を経て登るルートか、新穂高温泉から双六岳・三俣蓮華岳を越えるルートがあるが、いずれにしても長大な「山旅」が必要だ。

《 コース・タイム 》
日 付 出発時刻・地 到着時刻・地 歩行時間・距離 休憩他
2008/09/23 5:50 太郎平小屋 7:15 北ノ俣岳 1時間25分 3.7km 5分
7:20 北ノ俣岳 9:40 黒部五郎岳山頂 2時間20分 4.6km 35分
10:15 黒部五郎岳山頂 11:30 黒部五郎小舎 1時間15分 2.9km 5分
11:35 黒部五郎小舎 13:10 三俣蓮華岳 1時間35分 2.0km 10分
13:20 三俣蓮華岳 14:45 双六小屋 1時間25分 3.5km -
合 計 標高差:約1,490b 8時間00分 16.7km 55分


太郎平から望む黒部五郎岳
 午前5時30分から始まった朝食を素早く済ませると、ほどなく小屋の東側から南に延びるなだらかな登山道を歩きはじめる。その先には、行く手に立ちはだかるような黒部五郎岳の雄姿が見えている。

 『きょうは、あれを越えていくんだ』と気を引き締めると、太郎山をはじめとするいくつかの小高いピークがつづく登山道を進んだ。

 振り返ると、きのう登った薬師岳がどっかと構えている・・・まるでわたしにエールを送ってくれているように思える。

 ときおり急坂が現われるものの、全体的には緩やかに上っては下り、下っては上る。そんな繰り返しが幾度かあって、北ノ俣岳(2661b)に至る。

 見晴らしのいい頂上からは、南西方向遠くに白山が望め、東側には北アルプスの峰々が眺められる。

 もちろん目の前には、目指す黒部五郎岳がそびえている。なだらかにうねった高原を縫うように延びる登山道はその先で、やがて山腹をジグザグに上っていく様子がはっきりと見てとれる。


北ノ俣岳頂上標識

黒部五郎岳頂上で
 息を切らせながら登り、途中で東側にまわり込むように上がっていくと、ほどなく黒部五郎の肩に着く。カールを経て黒部五郎小舎に至るルートを左に分け、右手に進んで急坂を頂上に向かう。

 岩場を過ぎると、まもなく石畳が敷かれたような緩やかな登山道となり、少し先に数人の登山者を認めた。どうやら黒部五郎岳頂上に到着したようだ。

 きのうの薬師岳と同様に360度の大パノラマが開け、数えてみると、10座以上の百名山が確認できた。

 頂上で寛いでいると、あたりが騒がしくなってきた。富山県警のヘリコプターが忙しくカールを旋回している。このときは『訓練かな?』と感じた。

 しばらくして、黒部五郎のカールを下らず、尾根を下ることにして、岩場を下りはじめる。ヘリコプターが尾根の上まで旋回するようになる。

 岩場を降り切り、黒部五郎小舎の上の平坦な場所でふたりがあたりを眺めながら佇んでいた。『20歳位の男性を見なかったか?』と訪ねてきた。ヘリコプターはその若者を捜索していたのだと知った。


黒部五郎小舎からの紅葉
 黒部五郎小舎でアルバイトをしていた若者が2〜3日前から行方不明になっていて、その青年を捜索しているのだ、と言うことも双六小屋で同室となった年配者から教えられた。見ず知らずとはいえ、その若者の無事を祈らずにはおられなかった。

三俣蓮華岳頂上標識
 黒部五郎小舎前で振り返り、下りてきた尾根の最下端の紅葉に思わずシャッターを押した。小休止のあと、小屋の裏手の雑木林に入りむ。

 急坂を上っていくと、ときおりまわり道があるが、かまわず急登を試みる。緩やかに歩いても、急坂を登ってもたいして変わらないように思えたから・・・。

 少し我慢して急坂を越えると、ややなだらかな上りに変わり、右手の上に目指す三俣蓮華岳(2841b)が見えてくる。大きく右カーブするように尾根を上がっていくと、ほどなく頂上に到着。

 数人の登山者に混じって休憩をとる。夫婦ものが双六小屋と三俣山荘をつなぐカール道へ下っていく。

 しばらくして、わたしは彼らのあとを追ってカール道に下るか、双六岳に向かう尾根道を行くか迷ったが、結局、尾根道を進むことにした。

 手にしていた地図『日本アルプス総図』では、双六岳手前からでもカール道に下ることができると判断したからだ。分岐を下りはじめたとき、薬師岳頂上で逢い、太郎平小屋で同宿した青年が追い付いてきた。


双六小屋
 『双六岳に行かないのですか?』と声をかけててきたが、わたしは『足がいっぱい、いっぱいだから・・・』と彼の誘いをやんわり断ると、そのまま一年ぶりの双六小屋を目指した。
 まもなく降り立った双六小屋で宿泊手続きを済ませたあと、リュックやストックもそのままに、生ビールとおでんを注文して、ひとりで祝杯を挙げていると、しばらくして、件の青年が小屋前に到着した。
 その後、小屋の談話室に入ったわたしは夕食まで、彼、新穂高温泉でアルバイトをする青年、愛知県春日井市からきた若者、カール道の分岐でわたしのすぐ前を歩いていた年配者を含む5人で山の話に花を咲かせた。5人は部屋も同じだった。