ショートショートストーリー / コロコロ
コロコロ
コロコロ 1-2
哲也は眼下に広がる灯りを長い間眺めていた。
ここから麓への下りに15分ちょっと、トライ続ける哲也にちょっとが切れないタイムだった。
また、先週の苦い失敗を思い出す。
S字カーブが続く三つ目の左アウトからインに入るポイント、激しい横Gに左リアが抜けてしまった。
後輪サスを固めたがリアが流れ甘かった、シートを外した後部にブロック積み上げ紐で固定した。
「いくぞ!」
どうやら、思い通りのイメージで入っている。
「さぁ、三つ目の左アウトからインのポイントだ!」
哲也はイメージ通りに抜けて行った。
「やったぞ!」
突然、目の前に無灯火の2輪が映った。
哲也はリアを流しながらかわそうとしたが、ブロックが外れた。
ドーン、2輪は避けたが左サイドを激しく当てて、哲也は宙に舞った。
「くそぉ、甘かったか!」
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コロコロ 2-2
ここは何処だ!
哲也は目を覚ましたが、手足が思うように動かない。
暗闇の中にいた
「哲也、哲也。」
え、お母さんなの。
コロコロ、コロコロ。
何の音だ。
そういえば、線香の匂いがする。僕は死んだ?
そういえば、一度死んだ人間が生き返る事があるって聞いた!
そうなんだ、僕は生き返ったんだ。
コロコロ、コロコロ。
よせ、よせよ。
ひょっとして、ここは火葬場じゃないのか。
おい、棺桶を動かしていないか。
僕に意識があるのなら、僕は生きているんだ。
母さん!
俺は生きているんだ! 俺は生きているんだ!
助けてくれよ!
俺を火葬にするんじゃない!
コロコロ、コロコロ。
「哲也、哲也。」
母は泣きながら歩いている
哲也は骨壷の中に居た。
コロコロ
H21.7.8初稿
H24.1.5修正
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