ショートショートストーリー / 時間を止める少年


時間を止める少年

時間を止める少年 1-1

少年は時間を止める能力を持っていた。

停止できる時間はたった14秒だが、停止した世界を自分だけが自由に動けた。

少年は秘密にしている。

時間を止める能力を人に知られると、強欲な人間に利用されるに違いないから。


少年の通う学校は丘の上にあり、そこから美しい町並みが望めた。

都会から来た少年は同級生にもすぐに馴染んで、彼らは少年の嫌な過去を忘れさせてくれた。

なによりも優しい彼女と出会えた事だ。


珍しくクラブが早く終わって、「今なら下校中の彼女に会えるかもしれない。」

そう思った少年は学校を飛び出して、長い下り坂を駆け下りた。

少年はすぐに彼女の後姿を100m先に見つけた。


だが、彼女の背後に無人のトラックが数メートルに迫って、彼女を轢こうとしていた。


少年は時間を止めて走る。
僕の100Mを15秒台なら、彼女を突き飛ばすくらいできる。


トラックを追い越した時、ゆっくり時間が動き出した。

あぁ間に合わない、少年は彼女の名前を叫んだ。

彼女は声に振り向き、お互いの目が合った。


---- 意識がぷっつり消えた。 ----



騒々しさに少年が気がつくと、電柱にぶつかったトラックの周りに人だかりが出来ている。

そして、座り込んだ彼の横に・・ 彼女もいた。

「助かったんだ・・」

「ありがとう。あなたがいなければ、私は死んでいたかもしれない」

お互いの無事に喜んだ。



あなたも私に感謝してよ。

私が時間を止めて、貴方を助けたんだからね。 でも、これは 秘密。






時間を止める少年少女
H17.10.26初稿
H24.1.18修正加筆

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