ショートショートストーリー / 線香の匂い
線香の匂い
線香の匂い 1-1
彼は数日前から線香の匂いに悩まされていた。
そう、霊感のある彼は霊を感じているのだ。
供養された霊は線香の匂いをまとっている。
それは彼の知る誰かの身に何かが迫っている事を意味する。
いつもそうだった。
肉親縁者にそれとなく電話したが、それらしい兆候は聞けなかった。
自分に霊感があると言えば親戚から白い目で見られてしまう。
そんな理由では聞けるはずもない。
ひょっとすると我が身の事かもしれず、不安な日々に彼は憂鬱だった。
ある日、線香の匂いがぷっつり消えた。
彼の不安は一気に高まった・・
妻の仕掛けた禁煙グッズに彼は気づかなかった。
下品な線香の残り香と用意したイライラさせる禁煙グッズだ。
自称霊感があると称する者は、決して科学的裏づけはしないもの。
いや、妻は彼に禁煙を願ったのではなかった。
夫に多額の生命保険を掛けていた。
さぁ 次はどの手にしよう。
妻は微笑みながら、夫の崩壊を待っていた。
線香の匂い
H17.12.11初稿
H24.1.18修正加筆
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