ショートショートストーリー / ガンつけの女


ガンつけの女

ガンつけの女 1-1

さっきから気になるのはガラスに映っている女。

確かに目線を僕にあわしている。


いつものjazz喫茶が満員で追い出されてしまった。

ふいに後ろから声を掛けられた。

「僕達ここから帰るんですが、一緒にカラオケでも行きませんかぁ。」

見れば中学生くらい。おいおい、ナンパかよぉ。

「ふん、こんな時間までうろついて、その顔でナンパ? 顔を洗って出直しな、坊や。」

今日はついてない。


いい男に声を掛けられたら、僕は何処でもついていくよ。

家を出る時にちょっと「カワイイ」格好にしてしまった。

僕には似合わないなぁ なんて、思ったが。

だが、掛けられた相手が中学生なんて、恥ずかしいより情けない。

男日照りもここまでくれば最低。


だから何なんだ。あの女。

さっきから。

物欲しそうな目をしやがって。

僕はドアのガラスに向かって立っている。

あの女はつり革を持ちながら、ニヤニヤ僕を見ている。

誰が見たって可笑しいだろ。

くそ!



「おい、何処を見てんだ!」

車内なんて関係ない、女を押し倒した。

女はヘナヘナと座り込んだ。

そして、叫んだ。




「ヒロシ、ヒロシだろ。」

「親父、親父かよ。」



二人とも女装でのご対面です。

血は争えないというお粗末な一席。





ガンつけの女
H21.7.14初稿
H24.1.18修正加筆

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