ショートショートストーリー / 選挙の神様
選挙の神様
選挙の神様 1-1
駅前の街頭に立候補者のいない代理人の演説が始まっていた。
およそ、代理人が演説する異常な選挙戦は過去に例が無かった。
聴衆する人もまばらなのはマスコミで流される予想のせいか。
その予想とは、新型インフルエンザだ。
この夏に始まった新型インフルエンザは感染力の強さを見せつけている。
学校の学級閉鎖に始まり、大企業の麻痺さえ伝えられている。
夏場から一向に収束しない猛威に、マスコミは警戒を繰り返した。
そして、立候補者の大半が重症と報道している。
そんな中の選挙戦、代理人が演説する異常な事態となった。
「おい、確かインフルエンザは弱毒性だったはずだろう?」
「そうだったが、マスコミの報道があれじゃあ出れないじゃないか。」
多くの選挙事務所は報道による警告に従わざる得なかった。
「おい、こっちの立候補者に重症者が10人出たぞ。」
「またかよ、数字上では60%を越えたんじゃないか。」
「新しい情報だと、向こうの候補者の相当数が危篤状態らしいぞ。」
「嘘だろ、こっちも危篤状態の候補者が増えているのか。」
「ギリギリまで感染情報をマスコミに知られてはならんぞ。」
「いつまでも隠し通せるものではありません。」
「馬鹿、危篤の事をマスコミに知られたらどうするんだ。」
「何? こちらの感染者、それも危篤の情報が報道されたって?」
「そんな馬鹿な、候補者の90%が危篤状態だぁ?」
各選挙事務所は混乱の中に居た。
選挙民にも爆発的に感染者が増えて、選挙そのものが危うかった。
国は候補者の危篤状態は確認したが、死亡者は出ていない。
しかし、全国の有権者の感染率が80%を越えたのを憂慮した。
結局、国は初めて選挙の延期を決定した。
冬 新型インフルエンザは国内感染を完全に蔓延させた
しかし、弱毒性で国民の大半は軽かった。
あの立候補者達を除いて・・
ただ、一人の死亡者も確認されていない。
延期されたものの、いつ選挙が行われるか・・
神のみぞ知る。
神様「え、わし? こんな奴等は神様のわしが棄権じゃぁ!」
選挙の神様
H21.8.26初稿
H24.1.19修正加筆
* あくまでも冗談、ジョークです、ジョーク。ちょっぴり本音・・
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