ショートショートストーリー / 老人と交差点
老人と交差点
老人と交差点 1-1
目の前は赤信号、老人は車の来ない交差点で待っている。
信号を無視しても事故には遭わないと思われたが、
横に可愛い孫が居ては、信号無視は出来なかった。
孫も大きくなり、いつか老人は孫に手を引かれるようになっていた。
優しい孫は老人のゆっくりした歩調にあわせて歩く。
いつもの交差点は赤信号、昔と同じ様に2人は待っている。
ある日、息子夫婦の転勤が決まり、可愛い孫とのお別れがやってきた。
家財道具を積んだトラックを老人は見送る。
そして、老人はひとりぼっちになった。
老人はいつもの交差点で待っている。傍にいつもの孫は居ない。
交差点は赤信号。
不意に老人は赤信号を無視して車道に進んだ。
長いブレーキ音の後に激しい衝撃音が周りに響いた。
ざぁー、ざぁー
交差点はいつのまにか三途の川となり、そこを老人が渡っている。
向う岸には、去年死んだ婆さんが笑いながら手招きしてて・・
孫はいつもの交差点に立って、老人の事を思う。
いつもの交差点は赤信号、昔と同じ様に2人は待っている。
ちょっと、微笑んで
孫はそのことを知らない。
老人と交差点
H21.6.25修正加筆
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