友よ、12月30日は工業地帯に


『寒さにふるえてるけど、今日は思いきっていくよ。上手な写真なんてくそくらえ。ぶれとかピントなんか気にしないでさ。』

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『汚なくて冷たい工業地帯の水。それが見事な色を見せる。ここ何年でいちばんの青だな。気分は印象派の画家。水面の色彩をとらえろ!カメラはさっと上げてとまった一瞬にシャッターを押すんだ。ちまちまフレーミング気にしたりなんかしないよ。』

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『もう3年ぶりくらいかな。このあたりは。水辺にこんな遊歩道がつけられんだな。ふむ、こんな場所にこういうデザインが哀しい気分を誘う。』

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『工場のなかの植木は、たいていの場合生きてるのか死んでるのかわからんようなやつばっかりだけど、こいつはほったらかされて、きかん気のハリネズミみたいに強そうだった。』

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『今日の空は最高の状態だ。こんな日に撮影なんて、今年は終わりよければすべてよしだな。ちぎれ雲が低い位置を西のほうから飛んでくる。そのむこうに太陽があってドラマチック。こんな景色は小さいころよく見たな。熱を出した寒い夕暮れ、ママに手を引かれて病院につれていってもらった時、空を見ながら歩いてたんだ。身体全体でおぼえてるよ。いい景色を見たときは、好きな女のことか小さかったころのことか、思わないか?』

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『工場のなかの見るからに危険そうな配管や装置やタンクやらを見ると、深い海をのぞきこむような気持ちになる。自然と対立する人工的なものというのが普通のイメージだろうが、ほんとはそうじゃない。自然のエネルギーを取り入れて、それを自然の法則に従って変換してるんだから。ぼくらの生活をささえる日本の工業力。感謝と愛おしさを感じるよ!そうさ、心臓の脈動のように稼動し続けてるんだ。ごくろうさんと声をかけてやりたいよ。』

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『shadow shade silhouette』

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『逆光のやわらかい肌触り。中央にわずかな太陽を置いて。』

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『空高く。』

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『水面の光が屋根の内側に反射して、ちょいといいだろ。ちゃんと伝わるかなあ。』

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『濁ってさざめく。』

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『洒落たオブジェ。空をバックにくっきりと。』

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『だんだん光がよくなってきたぞ!太陽の位置が下がってきたぞ!』

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『あの街灯のデザインはエキゾチックだな。くもりガラスのにじみ具合が素敵だよ。まわりはくっきりしたシルエットばかりだから、それとの対比がきれいなわけ。なんかね、たしかkennaっていう人のrougeという題名の写真集があってね、それ思い出すよ。あれ買っておけばよかったな。でもちょっと高かったから。』

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『西の空へ続いて。』

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『露出を落として撮りました。それで成功したと思います。』

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『こういう光をさがしてたんだ!こんな景色の前にはカメラの使い方の技術的なことなんか、もう関係ないのさ。必要なことといえばせいぜい露出補正くらいかな。』

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『ネットフェンスにしがみついて。』

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『工作物の遠近感。』

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『冷たい西風が吹き付けて、息も詰まりそうだよー。もう水平線のそばまで太陽が落ちてきた。波打つ海面がすぐそこに寄せてきてて、ぞくぞくするな。水浸しの護岸の水面の反射が、いい景色を作ってるのさ。きみとぼく以外には見渡すかぎり誰もいない景色。波の音、風の音、打ち捨てられたような作業船のきしむ音が、最高の音楽に聴こえる。風景と音が見事に調和してる。ふー、風が冷たくて手がちぎれそう!』

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『風で君の髪が乱れる。』

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『仲間といっしょにがやがや言いながら写真とってまわるのは楽しいね。景色をなんだかんだと批評しながら歩いてると、どんどんエネルギーが湧いてきて、それがフィルムにも写りこんでくるような気がするな。今日はほんとによかった。きみのおかげだよ。やっぱりドイツの車はずいぶん頑丈な乗り心地だな。去年の12月30日は、雲の多い湿った天気だった。出かけてみたけど、1枚もシャッターを押さずに帰ったよ。それが今日は何年に一度のコンディションだった。年末のお休みで工場は全部休業してるから、人も車も全然なかったしね。今年もなんとか終わりそうだ。これから先いろいろ不安はあるが、生き抜いていこうぜ。お母さんずっと入院してて大変だね。大事にしてあげてくれ。もう日も落ちてちょうどいい時間だから、国道沿いのロイヤルホストで暖まっていこうよ。』