美人
10代のころの後藤久美子と斉藤由貴をあわせたような容姿の美人。
夏の終わりに職場の男に誘われた。
最初のデートは佐伯祐三の展覧会。
秋、冬にかけて週末ごとに会った。映画、食事、街歩き。
美人は男を尊敬していた。
標準語で敬語を使い、物腰が柔らかだった。
美人はプラトニックな関係にじらされていた。それで、春に爆発した。
男はこれ幸いと、それに乗じた。
二人の関係は、良好となった。
同時に美人と男は恐慌に陥った。
美人は、以前から別の男と同棲していたのである。
そのことを男に告白したのだ。
「わたし二重生活なのよ!」
と、電話で泣き叫んだ。
その折も折、同棲している男が帰ってきて、呼び鈴を鳴らす音が受話器の向こうから聞こえていた。
よくある話というものだ。
男は正しい人格をもっていたものの、現在の美人との関係を継続することを望んだため、美人を許し、同棲している男を追放することを求めた。美人はそれに従った。
美人と男は、危機を乗り越え、良好な関係を取り戻した。
しかし、美人は嫉妬深いうえ、徐々に傲慢となり、男は辟易してきた。
美人は、男が台風の夜に電話をよこさなかったことをなじり、もう別れるのが潮時だなどといった。
そして、恐怖の夜が訪れた。
男が美人に電話し、美人がそれを一方的に切ったときだった。
受話器が外れていたのだ。
美人はかつて同棲していた男を部屋に連れ込んでおり、その男と会話している様子が聞こえてきたのだった。
眠れない夜を過ごした男は、翌日、美人を呼びただした。
美人は言った。
「はっきりしたじゃないの。」
しかし、美人と男の関係は再び持ち直した。
それは本能のなせる業であった。
やがて、春がめぐり、ようやく関係が消滅した。
しばらくたって、美人は同棲していたのとは別の男と結婚した。
晴天の霹靂。
美人は生理不順であったため、子が生まれず、それが理由で離婚した。
そして、精神を病み、発狂した。
美人薄命である。