Tokyo Disney Land
東京は10数年ぶりだ。出発はまだ暗いうちに。
行きの新幹線で「アホでマヌケなアメリカ白人」を読む。
東京駅に着いたら別世界だった。駅員さんが、直立不動、こめつきバッタの様相にて、「ご乗車ありがとうございます」と大声で迎えてくれた。
駅の雑踏を行きかう人たちは、関西人よりも背が高い。服装は一様に地味である。
地下鉄に乗り換える。地上の高架路線に出ると、海に光る冬の太陽がまぶしい。湾岸地帯の開発は、大阪湾のせこい光景とは桁ちがいだ。東京における公共投資が日本を引っ張っている。
舞浜で下りると、アメリカに抱かれた。
ホテルのチエックインカウンターに荷物を預ける。仕事のスピード、物腰の洗練に心が躍る。
地下の食堂街で、てんぷら定食を食べる。
美味。
食い物だけは関西が上との意識をもっていたが、この一撃で見事に敗北した。
いよいよdisney landへ入場。
冬の寒いさかりなのに満員だ。へんてこなサングラスをもらってアトラクション会場へ入る。床がゆれ、足元を動物が這いまわり、冷気が噴射し、目の前に蛇の舌が踊る。
日本の遊園地をたたきつぶすに十分な見世物だった。
外へ出るとパレードが始まるという。
冬の陽を受け、寒さの中、みんなじっと座って待っている。あまり声はしない。ただ、中国語の声高な響きが耳障りだ。
快晴の空に静かに星条旗がゆらいでいる。
植え込みは、チューリップが全面を覆っている。この季節だというのに。
不気味である。
パレードがやってきた。みんなやんやの喝采だ。ばかでかい音でスピーカーから脳天気な音楽が流れる。
狂騒状態。
花火が上がってパレードは終わり、ようやく静かになる。
次々と足早にアトラクションをまわる。
夕闇の覆う時、キャンティーンスタイルの食堂でチキンの定食を食べた。
アメリカンフードをバカにしきってきたが、美味だった。
場内は、夜もまったく人が減らない。さすがに疲れる。
モノレールに乗って、シェラトングランデトーキョーベイへ。
静まりかえったロビーにはいると、ボーイさんが「おかえりなさいませ」と声をかけてくれる。
すべてにおいて清潔。斬新で機能的な空間構成、照明の見事さ。日本のホテルなどひとたまりもない。
部屋は広く、完璧だった。
アメリカ製のテレビでNHKのニュースを見る。失業者の収容施設を報道している。それは、東京の光景だった。きまりが悪くなって、切ってしまった。
バスルームで浴槽にふんぞりかえる。完膚なきまでに身体の隅々を洗う。
火照った身体にバスローブをまとう。
眠りにつく。
翌朝。
よく眠れた。今日も快晴だ。
だだっ広いレストランでバフェ。何を食っても美味い。これで3000円ならお値打ちというものだ。
すぐにdisney resort seaへ。開門を待つ列には若者が多い。派手な服装の子は見かけない。家賃を絞りとられて、服に金を使う余裕がないのだろう。東京の持ち家率は43パーセント。全国最低である。
門が開くとみんな一気に走り出す。お目当てのアトラクションへまっしぐらだ。
日差しを浴びて、補色のビオラが植えられた花壇の横で、日向ぼっこをして過ごす。
いよいよ、苦しくなってきた。
この人工的世界。
このアメリカ。
どこまでやれば気がすむのか。
遠く池の上で水上パレードが始まる。
ただ、黙って見つめる。
学生の時に学んだ憲法の条文が、静かに頭の中を流れていく。
腹が減ったので、昼食にする。
ステージが設えてあり、これでもか、これでもかとショーを見せ付けられる。
その軽薄、極楽気分たるや、想像を絶するものがある。
昼からは、ハワイ、中近東などのパビリオンを見てまわった。
大きな木のてっぺんにロビンソンクルーソーの小屋があり、そこに上って高所恐怖に襲われた。
行きかう人々は、みな楽しそうだ。アベック、家族づれ、若者のグループ。車椅子の人もたくさん見かける。バリアフリーが徹底しているのだ。
今日はこれで潮時。中華料理屋でベジタブルフードを中心にした夕食をとる。
さらに翌朝。
もう堪忍してほしい快晴。
アメリカンナイトメア最後の日。
部屋でバナナ。
ただちに出撃。買い物アーケードの品々を見てまわる。どの店も絨毯の感触が心地よい。
外でニューオリンズジャズが始まった。みんな大した腕前だった。
終わった途端、自転車式ピアノの白人のラグタイム弾きがやって来る。
アメリカの音楽は、すべて黒人のものだ。
ホテルにもどってバフェの昼食。
とにかく美味い!贅沢!吐くまで食え!
必死の食いこじきになっていると、後ろから4人編成のバンドが近づいてきた。
わたしが音楽好きだということを敏感に察知したようだ。
フィリピン人かと思ったが、バリ島からとのこと。なにかリクエストしてほしいというので、ブンガワンソロをやってくれと頼む。
すばらしいハーモニーだった。チップに1000円渡す。
他の客はくだらない日本の曲ばかりやらせていたが、どんな歌も完璧に演奏していた。
食後、部屋で休む。
そして、お別れ。
チエックアウトを済ませて列車に乗る。
あばよ、アメリカ。もう来ることは二度とないでしょう。あと半日ここにいたら発狂の可能性が大きい。
東京駅でユニクロのシャツを買い、駅弁屋で850円の弁当を頼む。店員さんの態度は非常に良い。
新幹線に乗った。もう陽も傾きかけている。がら空きの禁煙車両でゆったりできた。読んだ本は、「貧困大国アメリカ」。弁当もきわめて美味であった。
新大阪に着いて、大阪人の乗車マナーの悪さに懐かしさを覚える。
楽しい旅だった。