りなちゃんと
「ごめん。タバコ1本くれる?」
「いですよ。はい」
「ありがとう。これ30円」
「ううん、そんなのいいですよ」
「でも悪いから。友達と待ち合わせ?」
「ええ、でもまだ来ないの。いっしょに買い物しようと思ってるんです」
「きみはぼくの初恋の人にそっくりだよ。ファッションもメークもいいし」
「そんなこと言われると照れちゃうな」
「照れなくてもいいよ。ほんとにとても魅力的だよ」
「お仕事は何ですか」
「社会福祉関係」
「どういうことされてるんですか」
「母子家庭に給付金を支給したり、ホームレスの人に病院や施設に入ってもらったりだね」
「わたし、母子家庭なんですよ」
「そうなの。ぼくね、母子家庭を訪問して子どもたちの顔見るのが大好きなんだよ」
「でも、とっても大変なの」
「たしかに給料安いし、保育園も入れにくいよな。でも、お母さんたちは一生懸命だよ」
「・・・言いにくいんだけど、わたし1年前にレイプされちゃって、しばらくなにも手につかなかった。精神的にまいってしまって。でも、最近はちょっとよくなってます」
「なんてことしやがるんだ!ひどすぎる!」
「がんばってもとどおり元気になりますね」
「そうだ。希望を捨てちゃいけない」
「ぼくね、ウェブサイト持ってるんだよ。よかったら見てくれる?」
「へえ、どんな内容ですか?」
「絵画とか写真とかだよ。趣味だけどけっこうおもしろいんだ」
「わたしの友達、絵を描いてる人います」
「そうなの。美術はいいよね。まずはprofleから」
「うわあ、すっごいハンサム!」
「学生寮のホールで撮影したんだ。今よりもぽっちゃりしてるね」
「絵を見せてくださいよ」
「それじゃ、最近のやつ見てくれるかな。子どものころの写真から起こしたやつ」
「可愛いですねえ。なんか色もきれいだし」
「これなんかウルトラマリンがいいでしょ」
「わたし青が好きです」
「音楽はどう?」
「なんでも好きですよ」
「ぼくもすべてのジャンルを楽しむよ。すべての芸術は音楽に嫉妬すると言うんだ」
「たしかにそうですね」
「ぼくね、ギター弾くんだよ。オリジナル曲も50くらいあるよ」
「すごーい。ライブとかは出演するんですかあ」
「それが、なかなか活動の機会がないんだ。路上では警察が飛んできて止めさせるしね」
「そうですよね。よくありませんね」
「表現の自由というのはいちばん尊重されないといけないのに」
「あ、電話鳴ってる。ちょっと待ってくださいね」
「友達と会えそう?」
「うん、近くまで来てます」
「あんまり邪魔しちゃけないからもう行くよ。繰り返すけど、きみはぼくの初恋の人にそっくりなんだ」
「そんなふうに言われるうれしい」
「名前は?」
「りなです」
「りなちゃん、この花をきみにあげるよ」
「わたし花なんかもらったのはじめて」
「ありがとう、りなちゃん。お話できて楽しかった。きっとよくなるからね」
「こちらこそありがとう!」