負けてきし


負けてきし わが人生に ふさわしき 妻をさがしに ゆく雨の夜

泣き笑い 最後の夏に 人生を 抱き締めている マーラーの歌

残されし 日々には君と ふたりして 心を閉ざし 神と語らう

バロックの 歌流れてた 12才 雪降る朝の その青き色

暗闇に 光が灯って 踊るのは ベルリオーズの 第2楽章

秋の陽が 傾く時に 思い出す いずれ私の 時代が来ると

月が出て 幻のような 雲の色 君の指差す 大和平野は

ゆるやかに 林道登る ときに聴く わが息の音は 人類なりと

平群谷 列車の窓に 揺れいたる 梅雨明けの日の 光の勝利

下町の 雨のあがりし 青空に 威風堂々 口ずさんで行く

息詰まる 如き寒さの 闇はあり 湯煙熱き 窓を開ければ

風寒き 春の夕暮れ 悲しみの 乙女のように 無口に生きる

息つめて 世界音楽 聴いている 春の始まる 霧の夜かな

雨過ぎし 冷たき朝に 季節あり 休日勤務の 列車待つとき

夢に見る すべて解決 せし朝は ハイドンの曲 あざやかに聞く

日は高く まだ来ぬ夏を 心待つ 6月をこそ 美しと言へ

黄緑の まだらの朝の 木漏れ日に しばし溶かしむ 鉛の心

青空を 殺しにゆけり 従順の 通勤列車 河内の春よ

若人の 9割方を 憎しみで 迎え撃ちたり 三条河原

二人して 新薬師寺へ 歩みゆく 冬の陽の射す 記念日なれば

蛍舞う 沢の流れの 安らかな わがふるさとの 平群の谷は

降る雨は なま暖かく 横殴り 君を恋へども 庵にこもらん

亡き友が 吾に遺せる ギター抱き 今宵奏でる か弱き調べ

北山に 白雪冴えて 上流を はるかに望む 五条大橋

京都駅 愛しき人と 見えたり 祇園囃子の 優しき午後に