アゲハの重み

 

アゲハが羽化した

ゆっくりと動かす
翅(はね)の片方が
折れていて小さい

サナギから出て
折れ曲がったまま
乾いてしまったのだろう

りっぱな眼
りっぱな触覚
折れた翅

飛べないアゲハは
それでも
飛ぼうとする

手を差し伸べると
アゲハの重さが
指に乗り
腕へと
這い上がる

歩く力
生きる力
でも
折れた翅

悲しいのは
たぶん
観察者だけ

空を目指しては
地に落ちる
それを
淡々と繰り返す

自分の軽さで
飛べるはずなのに
自分の重さで
地に落ちる

それを
アゲハは
淡々と繰り返す