赤い月の夜

 

鳥が鳴いた
真夜中を過ぎているというのに
レースを編むように
繊細な旋律を奏でる

夢の入口で
わたしは想像した
夜空の色をした美しい鳥が
赤い月を愛でている

赤い月の姿をした
女神を愛でている

あの鳥は唄っている
地上に降りて来たりませと

清らなさえずりを真似て
わたしも一節くちずさむ

蒼玉(せいぎょく)の空から舞い下りてきた
深緋(こきあけ)の薄ぎぬは
極小の真珠玉となった月の光を湛え
月の宇宙へと通じる夢の迷路へ
いざなうかのように揺れる

赤い月の夜