読んでいた本のページに
うっすらと翳が落ちた
雨が降り始めたらしい
埋め立て地の荒涼の中で
生き抜いてきた野犬が
毒を喰らって死んだ話だった
ここは
文化的で清潔で闇を嫌う光の国
暗い野性の森から迷い込んできた
荒々しいものが棲む余地などない
雨の音が激しくなってきた
重く湿った心の扉の向こう
雨音のトンネルを抜けると
暗い森の入口だった
そこには
硬直して横たわる犬がいた
雨がやさしく降り注ぐ
毒を洗い流すかのように
時を洗い流すかのように
やがて
森の奥の方から
日が射してきて
その光に導かれるように
犬は頭をもたげた
異次元の雨が
静かに降っていた