薔薇の一秒

 

一輪の薔薇が
首を垂れている

深紅に華やいでいた姿は
今や記憶の中
時は留まることなく過ぎてゆく

暗色を帯びてうなだれる
花首に手を添えると
花弁(はなびら)の重なりの奥から
カサカサと問いかけてくる

~まだきれいですか
~もう終わりですか

わたしは無言のまま
花冠(かかん)を少し持ち上げて
労をねぎらうように
微笑する

~一秒一秒咲きました

濃緑(こみどり)の三枚葉の托葉には
小さな希望の淡緑(あわみどり)
咲き誇っていたエネルギーは
新たな芽吹きへと
移行しつつあるようだ