季語:原爆忌(げんばくき)

 

祈ぐ人の指先にある原爆忌 ねぐひとのゆびさきにあるげんばくき


晩夏~初秋の季語。

祈る人は指先を見つめる
祈る人の指先は熱い

神話の時代から
人類は繰り返してきた
善いことばかりではなく
悪いことも

そして反省してきた
はずなのに

また今年も
祈らずにはいられない

現世に絶望しそうになると
指先は冷たくなる

目に見えない涙が
そこに落ちたのかもしれない

光を見いだせない人は
曼荼羅の世界に光明を求め
心の中を潜行し
さらに祈りを深める

そこは安住の地ですか

祈る人は
晴れ渡った夏空を見上げたあと
ふたたび指先を見つめる

そして
そこにある思いを見つめる

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広島原爆忌…8月6日
長崎原爆忌…8月9日
そのほぼ1週間後が終戦の日だ

猛暑の最中にクローズアップされる負の記念日

激しい夕立のように思い出した後は
季節とともに記憶原野の片隅へと流し去られる

ひとときの平和幻想

そしてまた
けたたましく蝉が鳴く夏が巡りくる