白日 King Gnu

 

この世はまぼろし
ってのはなんとなく感じている

そんななか、この曲はまぼろしだ
って思ったとすると

一周回って、まれなる真のものなのか?
それともまぼろしの幻なのか

ま、どちらにしても
何度もリピートするゆえんではある

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■■「白日」…幻想と現実と■■

King Gnu(キングヌー)の「白日」は、なぜかとても心地よい。
井口理(いぐちさとる)のファルセットボイスのせいなのか。
裏声には、ファルセット(息漏れあり)、ヘッドボイス(芯がある)、ミドルボイス(裏声+地声)
といった種類があるそうだ。
この曲では、吐息っぽいファルセットから力強いミドルボイスまで色々聴かせてくれる。

それにしても、なぜ男性の裏声(高音)って気持ちいいのだろうか?
もちろん、女性のソプラノも気持ち良いのだけれど。
何かしら、心が甘くざわつく。
両性具有感というか
背徳感とまではいかなけれど
背徳の香りとでもいうか
美は乱調にありというか
人外境へといざなわれるがごとし、とでもいうか…

などと考えていると、むかし「カストラート」という映画があったのを思い出した。
カストラートとは、少年期の高音を維持するために去勢された男性歌手のこと(ウィキペディア)
近代以前のヨーロッパの話である。
何か野蛮で悲愴なイメージをいだいてしまうが、有名になると巨万の富を築き
その歌声は、女性を失神させるほど甘美なものだったという。

男性の高音には「この世のものではない感」が漂う。
つまり、幻想の世界を垣間見させてくれるドラッグみたいなもの…
などという例えはちょっと不謹慎だけど、だから気持ちいいのか
と勝手に納得したりして。

井口の高音と、井口とは対照的な常田のビターヴォイスが織りなす妙。
それは「幻想」と「現実」が織りなす妙でもあり、時に不安気に、時に甘美に重なってゆく。

そして、白い雪(幻想)は土(現実)を隠しながらすべてを白く変えてゆくのである。