白龍と精霊

 

峻厳孤高な岩山の
底を流れる急流に
水神を祀った廃院の
廃院と見えるのは
この世の次元ゆえ

あちらの世界では
水を吐く龍の口に
見えるという

三本の指に握られた宝珠を
高く掲げて日月とし
豊かな流れを照らす白龍は
褥とする急流と
同じ速さで空を飛ぶ

自ら巨大な雲となって
汚れた大地を雨で浄化し
乱れた世を悲しむ咆哮は
雷鳴となる

水の神に侍るのは
知と力の精霊

知の深さは七彩五色
龍の目から放たれる光の色

龍の四肢に充ちるのは
蒼天を支える力

ねじれた巨木の森の中
渓声に耳を澄ませば
天詔琴(あまののりごと)に似て
昇天する龍を想う

その飛沫が心奥を濡らすとき
蜃気楼のように
龍の世界が立ち現れる