季語:櫨紅葉(はぜもみじ)

 

天に月深緋に沈む櫨紅葉 てんにつきふかひにしずむはぜもみじ


晩秋の季語。

冬が近づきつつある秋の日
蔭で縁取られた石垣を映すお|濠《ほり》の|水面《みなも》に
赤い影を落とす|櫨紅葉《はぜもみじ》
白日のもと
その|葉叢《はむら》は燃えるように赤い

日が落ちると
熱が冷めるように夜の色と同化して
月を待つ

月の光が冷たさを増すころ
闇に沈んでいた|赤色《せきしょく》は
真昼の残像のように
ふたたび色を発し始める

白昼の緋と小夜中の緋
どちらの赤が
ほんとうの櫨紅葉の色なのだろうか



櫨紅葉
*ウルシ科の植物
*江戸時代にロウソクの原料として盛んに栽培されていた。
*ハゼノキを用いた染色に天皇の位当色である「黄櫨染(こうろぜん)」がある。
9月~11月に用いる襲(かさね)の色目の名。表は蘇芳(すおう)、裏は黄色

深緋(こきひ・こきあけ・ふかひ)
茜草だけで染める緋色と比べると、茜草に紫草を上染する深緋は染色に手間がかかる。
それだけに味わいのある色味であるとも言える。