
柑橘の葉っぱの影がだんだんと濃くなってゆく日暮れどき
木彫のネコの顔も翳りゆき妖し気な風情となる
魔術にでも使うのか?
その水晶は
ネコが捧げ持つトレイには水晶玉がひとつ
これがキラリと光るのを待ってみたけれど…
西日がやわらぐにつれ影は壁に浸み込んで薄くなり
いつものネコに戻っていったのだった

ネコの顔に西日があたる日
葉影はいよいよ濃くなり
後姿の黒ネコがくっきりと出現する
異世界に向かって今にも歩き出しそうな黒ネコは
目をそらした隙に白い壁に溶け込んで
居なくなりそうなくらいに
リアルだ
かたや光の中にいるネコは
夢見るような妄想するような
心ここにあらずの表情で
空(くう)を見つめる
ほんとうは
自分が幻なのかもしれない
そんな面持ちだ
光と影が分断したひととき
現実が幻想を際立たせ
幻想が現実を際立たせる