男は|印度《インド》を放浪した
蜃気楼のような写真を撮り
暗喩のような詩を書いた
灼熱の太陽に晒されると
野性の図太さが
繊細なものに見えたりもした
静まり返った夜の湖面の
銀色の月は冷たく
夜空を眺めるように
見下ろした
生死を|孕《はら》んだ大河の岸辺では
|悲愁《ひしゅう》と|諧謔《かいぎゃく》が
真剣に戯れていた
いくつもの独り夜を越え
土埃の道を旅した日々は
旅人の中に
深く深く
根づいていった
男はときどき夢に見る
太陽の熱の揺らぎ
夜の湖に落ちた月
大河を漂う魂の光
天国でも地獄でもない場所
鳴きながら飛ぶ孔雀の群れ
現実とも幻とも言えぬ場所