一艘の舟

 

心の湖に浮かぶ
一艘の舟

誰かと一緒には
乗れない
一人乗りの舟

大切な人がいても
お互いの舟で
並走するだけ

舟を漕ぎ出すのは
いつも夜

大きな満月
静かな湖面
息を吸って
息を吐いて

波のない湖上
揺れているのは


並んでいた舟が
いつの間にか
闇に消え

知らぬ間に
新たな舟が
月とともに現れる

星を眺め
星に別れを告げて
巡る舟の旅

夜の湖は
深く
暗く
それでも
漕ぎ出してゆこうか
今宵