蝸牛の午後

 

小さな蝸牛(かたつむり)の殻は
太古の遺跡のように
壁に貼りついていた

干からびた中身を想像して
鉢植えに転がして数日後
木の根元に動くものを見つけた

復活した蝸牛は
ゆっくりと土塊を行く

観察者は蝸牛の目線となって
礫、砂、シルト
巨大化した土粒子のすき間を
進んでゆく

やがてそれらは
泥岩、砂岩、石灰岩となり
いつの間にか
屹立する岩山を臨んでいる

青く澄み上がった大空
白く積み上がった僧院
赤い衣の修行僧の群れ

蝸牛の時間は
遠い遠いむかしの
遠い遠いどこかと
つながっていた