神さまの息 in D

 

神さまの息はそよ風となって
聖なる山の樹の間を渡る

森の動物たちが耳をそばだて
野山の草木が種子を託す

綠の大地を吹き渡った風は
最果ての砂漠に風紋を刻むと
広大な砂丘を下って
海辺へと砂を運ぶ

浅瀬の波でレースを編んだあと
光をたたえた紺碧の海面を撫で
やがて水平線の彼方へと消えてゆく

神さまの息がもたらしたものを
大切にする人々の地に争いはない
一日は暖かい太陽とともに始まり
冷たい月とともに終わる

地球上に人類が生まれてこの方
そんな時代はあったのだろうか

たぶん
誰も知らないだけなのだろう

カノンの音色に合わせて
洗濯物が揺れている