暗い窓

 

小さなモノクロ写真には

巨大な団地と工場群
間を分かつ黒い河
雨のそぼ降る大きな橋
点々の黒い人影
永遠へ続く鈍色の空

無数の四角い窓に
人の気配は感じない

けれどもそこには
人が住み
家族が集い
食べ物の匂いがしているはずだ
無機質なただの穴に
見えたとしても

写真の中に入ってゆけば
美しくないものが
味わい深いものに変化する
生きている命を感じると
暗い窓々も愛おしくなる

想像する力は
見知らぬ街を破壊したりはしない