レモンの風

 

レモンの黄色と海の青
どちらにも染まらない
無色透明な風が
石畳の道を吹き渡る

海の匂いを乗せ
レモンの香りを
摘み採りながら
迷路の道を吹き渡る

名残惜しげに
窓々を撫でつけ
レースのカーテンを
揺らして吹き渡る


海辺を愛した魂は
空と海を分かつ
遠い遠い水平線の
白い光の中へ
還ってゆくのだろう

そこは
夕べの黄色い太陽が
青い波に溶けながら
魔法のように沈む場所