道に迷えば

 

うららかな春の日に
いつもと違う道を行けば
道端の雑草の小さな花を
観察しながら歩いていたりする

雨水だけで育った花の
健気な色づき
コンクリートのクラックに
根を張る緑の生命力

竹藪の奥の方から
風が運んでくるのは
葉擦れの音の
静寂

水溜まりのような溜め池の
暗緑の水を潜る
赤い金魚の
孤独

道沿いに影をつくる
梢を見上れば
何かが羽ばたいて
木漏れ日に消えた

いつもより
目を開けて
だから
豊かになった気分
なのに
道に迷っている

春うらら