赤い鳥居を幾つか抜けると
神石のまします森の入口
幽けき水音に満ちて
姿の見えぬ精霊に満ちて
柄杓ですくった玉水を
神石に放てば
応えるかのように
キラキラと跳ねる飛沫
御頭(みぐし)にまで届けと
さらに高く水を放てば
白龍の鱗のように
躍りながら散る
躍り給え祓(はら)え給えと
水をまくうちに
大樹の葉叢(はむら)の黒い影が
こちらを見ているのに気づく
烏かと思えば
黄色いくちばしの黒歌鳥で
得意な歌を唄うことなく
静かに森の空へと消えた
少しだけ時を共有してくれたのは
水をまき散らしては
厳かな気分に浸っている人間に
好奇心をそそられたからだろうか
鳥が去ったあとには
絵のような静寂だけが
残された