夢逍遥 ~ ミコノス島

 

白い路地を行けば
ネコがいて
カモメがいて
ペリカンがいて
ピンクのブーゲンビリアの木の下に
ブルーのドアのジュエリーショップ
ショーウィンドウの宝石が
鮮やかなスイーツに見える
ということは
お伽の国の
お菓子の家
だとしたら
町家のバルコニーが
原色なのもうなづける
赤と青のクレヨンで
白い画用紙に
描いたらこんな感じ
などと考えながら
まだら模様の石畳を歩く
どうせなら
エーゲ海の見えるところへと
さらに路地を行けば
十字架とスイングベルを
|天辺《てっぺん》に掲げた教会の前へ
白い紙粘土の塊のような建物の
向こうには
青い海

夕暮れは
懐かしい記憶の国
太陽の名残りが
波間に金色の|欠片《かけら》を流す頃
桟橋の端っこに見つけたシルエットは
釣り竿を振り上げる少年
あの子が魚を釣り上げるまで
しばらく眺めていようか
白い路地と
高台の水車と
わたしがいるこの場所に
ギリシャの星々を引き連れて
夜が幕を下ろすまで

海はまだ
かろうじてマドンナブルー
月はまだ
水平線の向こうに隠れている