眠れない夜

 

巡る思いが言葉に分解されて
いつの間にか鏡の迷路へ

言葉は鏡に反射して
増殖し響き合い
迷路の中で木霊する

時の流れは
陽炎のように
揺らぐばかりで
遅々として進まない

鏡の森の奥深くに
潜んでいるものを
探しているのは
自分なのか
他人なのか
わからぬまま
かすかな風の音に
誘われて
鏡面の迷路をゆく

風の音はやがて
蒸気オルガンの
音色となり
いつのまにか
メリーゴーラウンド
を追いかけている

秋の陽の匂いに満ちた
百年前の移動遊園地の
鏡の館を抜け出たら
ほんとうの夢の国で
覚醒するはずだ