地球の涙から生まれた人間は
自分の中に海をつくるために
涙を流す
陽光が戯れる
コバルトブルーの浅瀬には
トロピカルカラーの魚たち
子どものころに魅せられた
ビードロ玉の彩り
海の色が濃色に変わる
ドロップオフに
初めてダイブしたときの
わずかばかりの恐怖心と
大いなる好奇心
大人になればなるほど
心海(しんかい)は深くなり
屈折した太陽光が
届かなくなる闇の中に
ネオン色の魚を
泳がせたりもする
ときには
秘密や悪夢や心の傷を
海の底の底の
忘却の砂にうずめて
なかったことに
したりする
大人の深海