サメの深海

 

青いスポットライトが揺れる
海の中にいるようだ

あの苦痛の表情は
息ができないからではなく
音を生みだす苦悩なのか

チョーキングの揺らぎを
ビブラートで増幅させ
ネックを上下する指は
聴くものの心を上下する

苦悩が快楽にも見えるころ
慟哭するような音が
生まれ
重なり
観るものの心を海にする

ギター・ソロは孤独だ
自ら弾き出した音に
翻弄され
囚われて
空を仰ぐとき
孤高のサメとなる

青のライトに
赤が混じって
紫となった海を
銀のサメが
ゆっくりと泳いでゆく

聴くものの心も泣いている

サメの悲しみに
飲み込まれる
快感のなか
どこまでも沈んでゆく
深海は
夢のように
美しい