焦土の蝶

 

焦土にたおれた兵士は
土塊(つちくれ)の蟻を目で追う

まなざしが優しいのは
動いているものはすべて
命を宿していると気づいたから

生き残った兵士たちは
どこへ帰っていくのだろう

耳の奥の爆音の余韻が
消えてなくなる場所
人々の絶望のため息が
蘇らない場所

そんな場所が
この地球上に在るのだろうか


鉄のニオイのする風が
焼けた野原を吹き過ぎた

今は花も咲かない
荒れ地ばかりでも

蝶よ
いつか帰っておいで